論文
今回は、藤高和輝「パスの現象学―トランスジェンダーと「眼差し」の問題」(『フェミニスト現象学』ナカニシヤ出版、2023)を取り上げます。「現象学」が冠される本を読むのは初めてでしたが、専門知識が無くても読めるように工夫されていて、私にも分かりや…
光本順「クィア考古学の可能性」(『論叢クィア』第2号、2009)を読みました。一つの学問の指針を知ることができるよい論文でした。簡単にまとめておきます。 「クィア考古学」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、第三波フェミニズムを受けてフェミニスト…
最近出版された、『東アジアは「儒教社会」か? アジア家族の変容』(京都大学学術出版会、2022)という本を入手して少しずつ読んでいます。 今回は、第一部・第二章に収録されている、佐々木愛氏の「儒教の「普及」と近世中国社会―家族倫理と家礼の変容」の…
※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 陈鸿森「北朝经学的二三问题」(中央研究院历史语言研究所集刊 第六十六本第四分、1999) 【概要】 历代关于北朝经学的论述大抵依据《北史・儒林传序》,这是由于北朝学者的著作大多不传。这篇论文…
「声無哀楽論」は、当時の音楽論としてのみならず、当時の玄学や儒教批判の文脈、また文学としての評価など、さまざまな観点から読むことのできる文献ですから、研究も数多くあります。今回記事を書くに当たって読んでみた論文は以下です。 福永光司「嵆康に…
最近、中国古代の祭祀に用いられた酒やその容器について整理しています。今回は、中国古代研究者の必読論文の一つである林巳奈夫『漢代の飲食』(『東方学報』48、p.1-98、1975)ともとに、経書などに出てくる酒の種類をまとめてみます。 repository.kulib.k…
後漢を代表する経学者である鄭玄の研究は、過去様々な方向から深められており、その内容は多種多様です。鄭玄の学問が該博で、また生きた時代が激動の時代であるがゆえに、学者によって研究の切り口が大きく異なり、内容の相違が生まれてくるのでしょう。 今…
前回に引き続き、喬志航「王国維と「哲学」」(『中国哲学研究』20、2004)に導かれながら、王国維「釈理」を読み進めていきます。 ここは、ショーペンハウアーの説に則って、カントの言う「理性」を批判しながら、「理」の狭義の概念を整理していくところで…
前回に引き続き、喬志航「王国維と「哲学」」(『中国哲学研究』20、2004)に導かれながら、王国維「釈理」を読み進めていきましょう。 其在西洋各國語中,則英語之Reason,與我國今日「理」字之義大略相同、而與法國語之Raison,其語源同出於拉丁語之Ratio…
以前、こんな記事を書きました。 chutetsu.hateblo.jp 喬志航「王国維と「哲学」」(『中国哲学研究』20、2004)を読んでいて、王国維「釈理」の冒頭で阮元「塔性説」の話が出てきていたことを思い出しました。「釈理」は、王国維がショーペンハウアーの影響…
論文読書会にて、濱口富士雄『清朝考拠学の思想史的研究』(国書刊行会、1994)の「戴震と王引之の同条二義の訓詁」を読みました。 テーマは『爾雅』の以下の一条。 『爾雅』釋詁 台、朕、賚、畀、卜、陽、予也。 「台」、「朕」、「賚」、「畀」、「卜」、…
今回は、桃崎有一郎氏の「日本「肉食」史の進展に寄せて〈学術雑誌の書評のあり方〉を問う:中澤克昭著『肉食の社会史』を題材に」という論考を取り上げて、私なりの感想を述べたいと思います。 digital-archives.sophia.ac.jp この論考は、前半中澤克昭『肉…
前回の続きです。藤堂明保「鄭玄研究」(蜂屋邦夫編『儀礼士昏疏』汲古書院、1986)から、鄭玄の著作の執筆順を考えていきましょう。 残された疑問は、『周礼』『儀礼』『礼記』の三礼注がどの順番で成立したのか、というものです。三礼注が党錮の禁に坐して…
先週の続きです。 藤堂明保「鄭玄研究」(蜂屋邦夫編『儀礼士昏疏』汲古書院、1986)から、鄭玄の著作の執筆順を考えていきましょう。今回は、併せて池田秀三「鄭学における「毛詩箋」の意義」(渡邉義浩編『両漢における詩と三伝』汲古書院、二〇〇七)、間…
藤堂明保「鄭玄研究」(蜂屋邦夫編『儀礼士昏疏』汲古書院、1986)は、鄭玄についての古典的な研究です。後篇第四章が闕文になっているのですが、それでも今なお鄭玄研究の第一に挙げられる基礎的な論文といえます。 この論文には、鄭玄の生涯、また社会的背…
先日、木津祐子先生の論文「京都大学蔵王筠校祁寯藻刻『説文解字繫伝』四十巻について」(『汲古』78号、p.21-28、2020-12)に、本ブログへの言及があると知り合いに教えていただき、驚きでひっくり返りました。確認してみると、筆者が以前書いた記事の誤謬…
『史林』第101巻、第5号(2018年9月)掲載の李弘喆「世本探源―『世本』受容史研究序説」を読みましたので、簡単に内容をご紹介します。 『世本』とは、上古から春秋時代にかけての王や諸侯の系譜、その周辺情報を記した本で、古くはよく資料として用いられた…
前回の続きです。古橋紀宏『魏晋時代における礼学の研究』(p.9~)より。 まず、加賀説で鄭玄と王粛がともに「新」に位置付けられ、段階的な発展が想定されていたことに対して、以下のように反応します。 そこで注目されるのが、王粛の立場を説明する際にし…
今日は、古橋紀宏『魏晋時代における礼学の研究』をご紹介します。博士論文で、たまたま近くの図書館に入っており、読むことができました。 二回分の記事で、序章を簡単にまとめてお示しします(p.11~)。 本研究の主眼は、特に礼学に関する鄭玄説・王粛説…
一年ほど前の話になりますが、京都大学文学研究科中国哲学史研究室の発行する学術雑誌『中国思想史研究』が、京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」にてオンライン上で公開されました。(現時点では未公開の論文もかなり多いです。特に古いもの。) リポジ…
※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 喬秀岩「經學與律疏」(『北京讀經説記』萬巻樓2013、初出『隋唐五代經学國際研討会』文哲所出版2009) 【概要】 喬氏は南北朝の義疏学から『五経正義』に至る学術史の研究を進めてきた研究者。唐…
※論文読書会については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 大形徹「王弼の『論語釈疑』:『老子』の思想で解釈した『論語』」(大阪府立大学人文学会『人文学論集』1986, 4, p.1-15) 【要約】 本…
※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 大坊眞伸「『禮記子本疏義』と『禮記正義』との比較研究」(『大東文化大学漢学会誌』43号, p.79-110) 【先行研究(本論文の注より…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 影山輝國「皇侃と科段説―『論語義疏』を中心に―」(『斯文』122, 2013, p.1~14) 【先行研究】 ・喬秀岩『義疏学衰亡史論』(白峰社、2001) 南北朝から隋唐にかけての義疏学(特に…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節 前回の続きです。 【要旨】 戴震の「私欲」理解 問、『論語』言「克己復禮爲仁」、朱子釋之云「己、謂身之私欲。禮者…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節 今回・次回と二回に分けて、顏元から戴震に至る思想史を述べる部分を取り扱います。 【先行研究】 安田二郎「孟子字…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 张升「陈名夏与龚鼎孳,阎尔梅’‘绝交’‘考」(『顾诚先生纪年暨明清史研究文集』p157~167) 【要旨】 陳名夏、江蘇溧陽人、清初の貳臣。龔鼎孳、安徽合肥人、清初の貳臣。閻爾梅、…
※論文読書会については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 池田秀三「馬融私論」(『東方學報』人文科学研究所、1980) 【要約】 馬融と鄭玄が師弟の関係にあったことはよく知られているが、実際に…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 中純夫『劉宗周の陽明学観について-書牘を中心として-』(『陽明学』14号、2002) 【先行研究】 難波征男「劉台念思想の形成―王学現…
※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。今回は、「膨大な先行研究をどうまとめて文章にするか」という技法を学ぶ目的だったので、要約は手薄です。 【論文タイトル】 松島隆真『漢帝国の成立』松島隆真『漢帝国の成立』・序論(京都大学学術…