達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

『世説新語』小噺

 難解な記事が続いたので、たまには短くゆるく書いてみます。

 『世説新語』には俗っぽい話が多く、「その気持ち分かる!」と思わず共感してしまうエピソードに時折ぶつかります。折角ですので、少し紹介してみます。

 本日は、学者としても武人としても名高い、魏の鐘会の逸話。

鍾會撰四本論,始畢,甚欲使嵇公一見。置懷中,既定,畏其難,懷不敢出,於戶外遙擲,便回急走。(『世説新語』文學篇)

 さて、これを現代の院生版に改作してみましょう。(何故?とツッコまないでください。)

 私は論文を書き終わったので、指導教官の先生に見て頂こうと考えた。そこで論文を小脇に抱え、教授室へと向かった。

 しかしその道すがら、先生に論文を見せることが怖くなってきた。書き終わった時には自信作だと思っていても、いざ先生に見てもらう段になると、酷い出来であるような気がしてくるものである。否定されるかもしれない、怒られるかもしれない、悪い想像はどんどんと膨らんでくる。

 教授室の前に着いたものの、恐怖からかどうしてもノックができない。思い悩んでいるうちに、最早どうでもよくなってきた。やめたやめた、どうでもいいや。私は論文を廊下に放り投げると、すぐさまそこから走り去った。

 改作の出来栄えはさておき、人間味溢れる話ですね。