はじめに
前回の続きです。今回はオンライン篇、無料で使える便利なサービスのリストです。前回同様、抜けや偏りの多いことをお許しください。
・「国学大師」
50 以上の辞書を串刺し検索できる便利なオンライン辞書。中国語だが使い方は簡単。しかし、著作権的にグレーのサイトであることは確かなので、注意は必要。接続が不安定なことも多い。
使用頻度の高い辞書は、一文字単位の場合は『漢語大字典』と『故訓匯纂』。熟語の場合は『漢語大詞典』がよく参照される。『説文解字』『廣韻』など古典的な辞書も収録している。いずれも「文字版」でなく「影印版」を見ること。他によく使われるオンライン辞書として、「漢典」がある。また、とにかく正字・異体字について調べたい場合、調べても読めない字がある場合には「教育部異體字字典」が便利。
・「百度百科」
中国版の Wikipediaといった趣のサイト。誰の執筆か分からず内容には注意が必要だが、固有名詞らしき言葉が出てきた時や、「書名?人名?地名?」「字?号?」といったことさえ分からない時、下調べとして優秀。その後の確認作業はお忘れなく。また、Wikipedia の中国語版そのもの(維基)もそれなりに有用。
・「中央研究院 漢籍電子文献」
台湾の中央研究院の漢籍DB。十三経注疏・正史などを収める。誤字や脱字が比較的少なく、十三経注疏・正史なら「古籍庫」を使うより便利。「中央研究院 漢籍電子文献」→「漢籍全文資料庫」→「免費使用」で使えます。類似の DB に「寒泉」があり、収録されている書籍が微妙に異なる。
・「人名權威資料庫」
特に明清を中心とする、人名検索のデータベース。その人の詳しい経歴、職歴、著作、家族関係、友人関係も記載されており、非常に便利。とはいえ抜けも多い。
・「中国哲学書電子化計画」
かなり広い範囲で古典籍を収めるDB。使い勝手が良い。個人運営とのことで仕方ないが、誤字はかなり多いので注意。
・「白水社 中国語辞典(Weblio)」
ネット上で使うことが出来る非常に便利な日中辞典。典拠調べの時などに、中中辞典と合わせて使うと作業がとても捗る。中国語を書きたいときには例文検索も役に立つ。
・「漢籍データベース」
日本国内の漢籍の所在を調べられるサイト。版本検索の際に便利。
・「睡人亭」
花園大の山田崇仁先生のサイト。中国学に関わるコンピュータやインターネット利用の研究にかけての第一人者。自身の研究を紹介するとともに、初学者向けのページも充実。便利な工具類や、データベース紹介もある(この記事を読むより充実しています)。
・「学退筆談」
京都大学人文科学研究所の古勝隆一先生のブログ。読み物として興味深い上に、特に辞書解説、工具書解説の記事は便利。他に、漢文の学び方を一歩ずつ記した「文言基礎」もお勧め。(特に最初の方の記事は一読しておくと良い。)
【2019/5/11附記】
・「やたがらすナビ 和漢籍検索ツール」
特に日本古典の電子テキストの公開などをなされている「やたがらすナビ」様にある、和漢籍の研究ツールを検索することができるデータベース。オンラインで使用できる便利なツールを網羅しており、本稿で書き切れなかったオンラインツールを大量に調べることができます。
【2019/10/16附記】
・「寒泉」
台湾師範大学図書館が提供する無料の漢籍検索データベース。宋元学案・明儒学案・資治通鑑を収録しているところが特徴。また、諸子百家・十三経・二十四史を収録している。
・「捜韻」
音韻関係に強い検索サイト。漢字が韻書の体系で分類されており、『現代字典』『康熙字典』『説文解字』『佩文韵府』の記述を見ることができる。また、「古典,词汇」から『漢語大詞典』を検索することができ、出典・用例を調べるのに便利。「国学大師」と同じく、著作権上問題がないのかは不明。
・「中国知网」
通称cnki。中国で発表された論文の検索サイト。pdfでダウンロードができる論文が多いが、時折できないものもある。
・「CiNii Articles 」
日本で発表された論文の検索サイト。兄弟サイトの「CiNii Books」では、日本の図書館に所蔵されている本を検索できる。同じく、兄弟サイトの「CiNii Dissertations」では、日本の大学に提出された博士論文を検索できる。
・「コトバンク」
朝日新聞社が主体となって作った日本語の事典検索サイト。「ブリタニカ国際大百科事典」の日本語版を検索できるのが特に便利。記述内容に関して、「Wikipedia」や「百度百科」といったサイトよりは、信頼が置ける。
【2020/03/31附記】
☆使い方の分かりにくいデータベースについて、動画を作って解説しました!参考にしてください。
※他に「工具書篇」と「訳本篇」も作成したのですが、もう少し充実させてから更新したいので、先延ばしにいたします。