動画
Twitterで上記の動画(HiCE003: 中国思想文化学入門、広島大学が公式に公開している有馬卓也先生の講義)を紹介したところ、予想外に多くの反響がありました。この動画は、先秦から漢代にかけての「天」と「命」に焦点を当てながら、完全な初学者でも理解できるよう噛み砕いて説明するもので、非常に分かりやすい講義になっていると思います。
ここではこの講義を視聴した方のうち、「入門」からもう一歩進んでみたいと考えた方のための参考書を紹介します。中国思想に興味を持っている皆様の勉強の役に少しでも立てれば幸いです。
講義の概要
- 冒頭「占い・易」について
- 5分前後から「災異説」
- 10分前後から「殷周革命と天命」
- 15分前後から「天命の二種類の解釈」
- 26分前後から「『淮南子』と遇不遇論・応時遇化論」
参考書
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概説書
溝口雄三・小島毅・池田知久 「中国思想史」(東京大学出版会)
湯浅邦弘「概説中国思想史」(ミネルヴァ書房)
中国思想史について概説的、通史的に把握するには、上記の二冊がおすすめです。上の講義の内容は漢代に絞った解説ですが、大抵の概説書で漢代思想は分厚く扱われており、まずは参考になるでしょう。
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入門書
金谷治「易の話」 (講談社学術文庫)
『易』の持つ占いの側面と思想の側面の両方について非常に分かりやすい解説があります。
小南一郎「古代中国 天命と青銅器―諸文明の起源」(京都大学学術出版会)
青銅器を用いた考古学的方法によって、殷代周代を考察しています。天命や徳といった思想的概念についての考察もあります。
浅野裕一「儒教 ルサンチマンの宗教 」(平凡社新書)
講義の中で、孔子の言った「天命」という言葉に二種類の解釈の余地があり、それは孔子観の違いに基づくという話がありました。本書は、「政治改革に失敗した人物としての孔子」により焦点を強く当て、その人物像を描写しています。
金谷治「淮南子の思想 老荘的世界」 (講談社学術文庫)
講義の後半で触れられていた、『淮南子』という書物についての入門的な解説書です。
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翻訳書
本田済「易」―中国古典選〈10〉 (朝日選書)
『易』という本の全訳。『易』の内容そのものを読んでみたい人におすすめ。
日原利国『春秋繁露』 ―中国古典新書(明徳出版社)
抄訳です。董仲舒が災異説を唱える基本文献です。
宮崎市定「史記列伝抄」(国書刊行会)
「殷周革命」についての基本文献はまずは『史記』ということになるでしょう。宮崎市定は言わずと知れた東洋史の大家。これは伯夷叔斉伝を含む『史記』の列伝の翻訳です。
小竹文夫・小竹武夫 『史記』1本紀 (ちくま学芸文庫)
『史記』本紀の全訳。殷本紀の後半部分と周本紀の前半部分に殷周革命について書かれています。ちなみに、本紀の大部分は『尚書』からの引用なので、更に興味がある方は、『尚書』についても調べてみると良いと思います。
吉川忠夫・冨谷至訳「漢書五行志」 (東洋文庫)
後漢に編まれた『漢書』の五行志には、災異説の事例が大量に載せられています。『漢書』は『史記』からの継承部分も多いですが、「五行志」は新たに作られており、五行思想や天人相関論の流行が見て取れます。
池田知久「訳注「淮南子」」 (講談社学術文庫)
『淮南子』の抄訳。