達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

余嘉錫『四庫提要辨證』について

 前回まで、余嘉錫(1884-1956)『四庫提要辨證』という本を読んできました。概説の記事を書いていなかったので、簡単に紹介しておきます。

 

 余嘉錫に関する基本的な情報(年表、目録、交友録、逸話など)は、ウェブサイト「中国近代文献学―余嘉錫の総合的研究」に整理されています。

yujiaxi.wordpress.com

 

 訳本としては、『古書通例:中国文献学入門』(古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹訳注、平凡社、2008)『目録学発微: 中国文献分類法』(古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹訳注、平凡社、2013)の二種が刊行されています。どちらも研究入門書として最適な本です。特に『古書通例』の方は類似の本が少ない印象で、この本を読まなければ気が付かないことがたくさんあると思います。

 うち、『古書通例』の内山直樹氏の解説から、一節を引用しておきます。

 余嘉錫は一八八四年、すなわち清の光緒十年に生まれた。字は季豫。湖南省常徳の人で、その論著にしばしば常徳の古名を用いて「武陵余嘉錫」と自署している。・・・十六歳のとき、張之洞の『書目答問』を目にし、そこに羅列された書物の圧倒的数量に気おされ、足下の支えを失ったかのごとき不安に襲われるが、ついで同じ著者の『輶軒語』を読み、『四庫全書総目提要』という「良師」の存在を知るに及んで、一転思わず雀躍する。翌年、父が公務で長沙に赴いたのにともない、念願の『四庫提要』を買い与えられた際の喜びは、余氏自身の手になる『四庫提要弁証』序録に生き生きと描かれている。それとともに、これが余氏畢生の大著『四庫提要弁証』二十四巻の出発点となった。(p.345-346)

 『四庫提要弁証』の執筆は、文字通り余氏の生涯をかけた研究です。前回まで紹介してきたように、その考証を理解するのはなかなか骨ではありますが、読み進めれば必ず得るところがあるはずです。

 ちなみに、今回用いた『四庫提要辨證』は私が最近購入した本です。中華書局四冊本で3500円。これは実質無料ですね。比較的安価で入手できるようですので、皆様もぜひ座右にお備えください。(棋客)