中国において伝統的に重視されてきた古典のグループに、「経書」と呼ばれるものがあります。経書は、「聖人」と呼ばれる理想的な人格を持つ人によって編集されたとされる書籍群です。これらは儒教において聖典とされ、中国に限らず、儒教文化を取り入れた古典の中心に位置し続けてきました。
「経書」のうち、最も基本的なものは「五経」と呼ばれています。以下の五つの本です。
・『易』:陰陽と六十四の卦によって世界の成り立ちを示す書。
・『書』:尭、舜、禹ら伝説の聖人の発言を集めた書。
・『詩』:各地の民謡や民楽、祭祀の音楽を集めた書。
・『礼』:礼の制度(冠婚葬祭、外交、官職)などを記した本。
これを細かく分けると十三種類あり、「十三経」と呼ばれています。上にあげたもののうち、『礼』が三種類に分かれて、
・『周礼』:周の官職の仕組みとその役割を解説した書。
・『儀礼』:細かい例の手順について記した書。
・『礼記』:礼に関する雑著を集めた書。
同じく、『春秋』がその解釈の仕方によって三種類に分かれて、
・『左氏伝』:左丘明による『春秋』の解釈書。
・『公羊伝』:公羊高による『春秋』の解釈書。
・『穀梁伝』:穀梁赤による『春秋』の解釈書。
これに、以下の四種を付け加えます。
・『孝経』:経書の中心的な概念である「孝」の大切さを説く書。
・『爾雅』:経書を読むための辞書の役割を果たす書。
と、以上を合わせて「十三経」になるわけです。
最初に挙げた「五経」は、聖人の手を直接経由していることから、特に格が高いもの、とされています。最後に挙げた『論語』などは、聖人が直接編集したものではなく、弟子たちによって整理されたものであるということで、経書の順番としては少し後ろになるというわけです。
宋代に入ると、「四書五経」という言葉が生まれ、重視される経書にも少し変化がありました。「五経」は先に紹介した通りですが、「四書」とは「大学・中庸・論語・孟子」の四種のこと。「大学」と「中庸」というものは、もとは『礼記』の中の一篇で、宋代に入って朱子学によって重視されたものです。
こうして沢山の本をリストに並べてしまうと、数が多すぎて気後れしてしまうところがあるかもしれません。ただ、どれも読み切れないほど長いというわけではありませんし、また小説や物語というわけでもないので、頭から読む必要があるわけでもありません。
…というより、そもそも専門家でさえ、内容をきちんと把握しているわけではありません。毎日が新しい発見の繰り返しで、ある意味では、我々も初めて経書を読んでいるのと同じような気持ちでテキストを眺めています。
以下に簡単な訳本(いずれも電子書籍でダウンロード可能なものです)を並べておきます。是非、軽い気持ちで、手に取って眺めてみてください。
お手軽なのは『論語』、歴史が好きな人は『春秋左氏伝』がおすすめでしょうか。
それぞれの経書の紹介については、また機を見て少しずつ書いていきます。
早速、来週『礼記』の紹介を載せます!
最近、「経学」についての動画を作成してみましたので、合わせてご覧ください。