達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

『論語義疏』公開画像データ一覧

 『論語義疏』について、オンラインで見ることができる画像を自分用にメモしておきます。ついでに、『論語義疏』に関する研究書も簡単にまとめておきました。

da.library.ryukoku.ac.jp

 

 完本。日本で伝えられてきた『論語義疏』抄本は、影山輝國氏によれば、現存し所在が判明するものだけで三十六種あるそうです*1龍谷大学に所蔵されているこの本は、筆写年が文明九年(1477)であると明記されてあり、室町時代まで遡る抄本として非常に重要です。

 この本に限らず、日本の旧抄本系統の『論語義疏』には北宋の邢昺の『論語正義』が書き加えられています。ここから、これらの本がどれほど古い体裁を保存しているのか、という問題について議論されることになります。

 

3.根本本

www.wul.waseda.ac.jp

 完本、木版本。根本武夷による校正を経た本で、この本が中国に逆輸入されて中国の学者が『論語義疏』の生存を確認することになりました(当初は偽造を疑う学者もいたようです)。よって、清代に中国で刊行された『論語義疏』(知不足斎叢書本など)はこの本をもとにしています。

 根本本の底本については、影山氏の研究があります*2。日本の『論語義疏』の木版本には、他にも画像公開されているものがあるようですが、今回は省略しました。

 

4.武内本

dl.ndl.go.jp

 大正十二年、武内義雄らによって懐徳堂から発行された本。底本は文明本ですが、十種の旧抄本を突き合わせて校訂しており、別の新たなテキストとして見るべきものです。

 現在、中国で発行されている標点本は、この武内本を底本にしています。

 

5.研究書

 やはり日本で伝えられてきた本ということで、日本での研究は盛んと言えます。

 近年の研究動向については、髙田宗平「日本古代『論語義疏』受容史初探」(『国立歴史民俗博物館研究報告』163、p.265 - 291)の冒頭に分かりやすく整理されています。

rekihaku.repo.nii.ac.jp

※上のレポジトリのファイルでは、p.267-269あたりでページ順が入れ替わっていますので、ご注意ください。

 

 単行の研究著作としては、以下があります。

・高橋均『論語義疏の研究』(創文社、2013)

・高田宗平『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(塙書房、2015)

・喬秀岩『義疏學衰亡史論』(白峰社、2001)

 

(追記10.25)

 Twitter上で、他の抄本の公開画像データをご教授いただきました。

  ありがとうございます!

*1:影山輝國「まだ見ぬ鈔本『論語義疏』(6)」(『實踐國文學』88、p.113-119)→実践女子大学学術機関リポジトリ

*2:影山輝國「『論語義疏』根本刊本の底本について」(『實踐國文學』81、p.38 - 44)→実践女子大学学術機関リポジトリ