達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

中国史関係のWikipedia「秀逸な記事」「良質な記事」の紹介

 本ブログでは、過去たびたびWikipediaに触れておりまして、筆者もときおりWikipediaの執筆に参加するようになりました。徐々に機能にも慣れてきましたし、執筆者の方々の顔ぶれも何となく頭に入ってきました。

 今回は、日本語で書かれた中国学関係のWikipedia記事の中から、「秀逸な記事」「良質な記事」に選ばれているものをご紹介していこうと思います。

 「秀逸な記事」や「良質な記事」は、ある程度内容が質の高いものになったときに、Wikipedia執筆者の間で査読・投票し、高品質であると認められて記事のことです。現時点で、「秀逸な記事」に選ばれているのは91 本の記事(全体の0.007%)で、「良質な記事」に選ばれているのは1679 本の記事(0.13%)です。

 以下が一覧のリストです。 

 全体でもこれだけしかないのですから、中国史関係の秀逸な記事・良質な記事はごくわずかしかありません。以下にその一覧と、主執筆者の方を掲げておきます。抜けているものがありましたらご教示ください。

 なお、私の判断で便宜上「主執筆者」を挙げていますが、実際には非常に多くの方の尽力で現在の記事が出来上がっていることはご理解ください。その記事がどのような編纂過程を経て現在の形になったのかということが知りたい方は、記事の「履歴」欄を見てみてください。

秀逸な記事

  • 貴族 (中国)
    主執筆者:らりたさん、出典追加:TENさん
    全体としては「中国の貴族」についての記事というより「日本の中国貴族研究史」という色彩の記事で、内容は難しくむしろ専門家向けかもしれません。通史的で整理するのが難しい内容がよくまとまっています。個人的には図か地図を追加したいと思っているのですが、なかなかいいものが思い浮かびません。
  • 魏晋南北朝表
    主執筆者:らりたさん
    ややこしい王朝の変遷が一つの表にうまく整理されています。こちらは参考文献をもう少し追加しようかと思っているところです。

良質な記事

個別記事

  • 老子
    主執筆者:Babi Hijauさん(英語版を参考にしながら加筆)
    ただ「老子」の伝記をまとめるだけでなく、信古派・疑古派の議論にも触れられており、よくできた記事です。出典が細かくつけられている上に、もとが英語版だった関係で欧米の研究も多く引かれています。原典引用が残っているので修正が必要なのと、後半をもう少しうまく整理できないかと思案しています。
  • 馬王堆漢墓
    主執筆者:Asanagiさん
    素晴らしい項目です。「馬王堆漢墓」という百科事典の項目に書いてあるべきことがほぼ網羅されているのではないでしょうか。図も豊富です。よくこれだけの内容を独力でまとめられたと敬意を表します。参考文献はまだブラッシュアップする余地がありそうです。
  • 始皇帝
    主執筆者:Babi Hijauさん(英語版の翻訳+加筆)
    老子」と同様、出典が非常に細かくつけられている上に、欧米の研究も多く引かれています。近年の漫画やゲームにも触れているのもいいと思います。あとは籾山本・鶴間本あたりから参考文献を補強していけば、自然と秀逸な記事に仕上がりそうです。
  • 司馬遷
    主執筆者:Babi Hijauさん
    人物史として十分な内容を備えています。長すぎる短すぎず、私はこのぐらいの量が好きです。『史記』などの原典からの引用がかなり残っているので、修正する必要があります。あとは思想面をもう少し書きたいところでしょうか。

  • 主執筆者:LT sfmさん(英語版の翻訳+加筆)
    巨大なテーマですが、有名な作品にきっちり触れつつ、全体の流れがよく整理されていると思います。賦の分類を述べる箇所などは、箇条書きの形式でもう少し読みやすくまとめられそうです。専門的な記述も多いので、専門家の方に見ていただきたいところですね。

史記

  • 三国志演義の成立史
    主執筆者:トホホ川さん
    非常に充実した内容です。やや細かすぎるので、軽量化してもいいかもしれません。同じ方の執筆で、西遊記の成立史水滸伝の成立史も良質な記事に選ばれています。
  • 中国の絵画
    主執筆者:Uraniaさん
    基本概念・語句の説明と歴史の説明が両方備わっていて、たいへん充実しています。同じ方の執筆で、中国の陶磁器中国の青銅器も良質な記事に選ばれています。特に「中国の青銅器」に載っている画像は私もよく使っています。
  • 中国の科学技術史
    主執筆者:Khaiyaamさん
    英語版からの翻訳記事で、重要な情報は概ね揃っています。若干西洋から見た中国観に引っ張られている感じがするので、いつか加筆したいと思っています。
  • 中国の貨幣制度史
    主執筆者:Mokeさん
    出典・参考文献が量・質ともに素晴らしく、必然的に、その内容も全体の流れと細かな事実が両方踏まえられていて質の高いものになっています。現代の貨幣制度まで踏み込んで書かれているのも素晴らしいです(ただの歴史好きが執筆すると、現代の項はおろそかになりがちです)。「秀逸な記事」の選考に出してもよいのではないでしょうか?

 ほか、専門外過ぎて紹介文を書ききれませんでしたが、中国史関係の良質な記事には以下のものがあります。