達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

Wikipedia執筆録(7)

 またDiffの記事を書きました。この一か月間はかなり精力的にWikipedia執筆に取り組んだので、その成果や、その時に考えたことをメモしています。特に、「プロジェクト:LGBT - Wikipedia」の整備について詳しく書いています。

diff.wikimedia.org

 以下、Diffに書きそびれたことから、いくつか拾っておきます。

 もともと「性同一性障害」という記事名だった日本語版Wikipediaの記事が、「性別不合 - Wikipedia」に変更されました。これは近年の国際的な潮流や学会の動向を受けてのものです。同じく、「日本GI(性別不合)学会 - Wikipedia」も最近変更されたものです。

 次に、記事の編集をしていると、たまに「Wikipedia:中立的な観点」の点で問題がある記述(または差別的な記述)に出くわすことがあるので、その例をメモをしておきます。(以下の記述は、どちらも記事を編集する際に合わせて変更しております。)

 一つ目は「アウティング (oldid=101301132)」です。この版では、冒頭でわざわざ、イスラム教圏の人物に対するアウティングが特に危険を招く行為であることを強調しています。しかし、アウティングが人を追い詰め時に死に追いやるということは、別にイスラム教圏に限った話ではないですし、またイスラム教圏内でも場所によるところはあるでしょうから、冒頭でこれだけを強調するのは違和感があります。国や地域別のアウティングの事情については、記事の中身で各々区分けして説明することにして、冒頭でイスラム圏の事例のみを強調するのは止めました。(こうした書き方はピンクウォッシング的だと思います。ピンクウォッシングについては以前ブログに書いたことがあります→『交差するパレスチナ: 新たな連帯のために』を読んで(3) - 達而録

 ただ、このアウティングの記事自体、内容がアメリカの事情に偏りすぎているうえに、内容がかなり分かりにくいので、大幅な加筆修正が必要だと思います。

 二つ目は、「性別とジェンダーの区別 (oldid=101273897)」です。この版には、「内面的性別は外部から確認できず、偽ることができること」や「外面的性別による区別の必要性」の記述がわざわざなされています。ただ、そもそもこの記事でいうgenderは、人の性別に関連付けられている役割(ジェンダーロール)も合わせて示しており、いわゆるジェンダーアイデンティティだけを指す記事でもありません。ジェンダーアイデンティティについても、まず説明すべきことが山ほどある中で、すっとばして上記のような記述をするのは、「中立的な観点」を欠いていますし、トランスジェンダー差別を煽ることにもつながります。こちらも修正しております。

(棋客)