達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

油そばのすすめ

 以前、トマトパスタの作り方を記事に書いた(トマトパスタのすすめ - 達而録)。この時に伝えたかったのは以下のようなことである。

  1. 料理の味を変えるパラメーターはたくさんある。
  2. 同じ料理を漠然と作っていても、味の変化とパラメーターの変化を自分の中に落とし込むことができないので、味が変化する要因が分からず、料理は上達しにくい。
  3. そこで、一つのパラメーターだけを変化させ、残りのパラメーラーを固定することで、パラメーターと味の変化の関係を特定することができる。(そのためには具材の決まったシンプルな料理を選ぶ必要がある。)
  4. パラメーターの変化と味の変化が結び付くと、味に対する解像度が上がり、自然と料理のスキルが上がるし、自分の身体の感覚に敏感になることができる。(そしてそこに「遊び」の要素がある。)

 一般的に言って、料理のパラメーターはすごく多い(食材の質、鮮度、炒め方、煮込み時間、調味料の量、調味料を入れるタイミング、盛り付けetc)ので、同じ料理を続けて作ったとしても、パラメーラーを固定するのは案外難しい。しかし、具材や工程の少ないシンプルな料理ならば、パラメーターの数が減るので、パラメーターの固定が容易になる。前の記事で、パラメーラーを固定して味の変化を掴みやすい料理として紹介したのが「トマトパスタ」だった。

 今回は、似た料理、つまり具材も味付けもシンプルながら奥深いパラメーターの変化を味わえる料理として、「油そば」を紹介したい。油そばと一口に言っても色々あるが、私が作っているのは「煮干し油」で作る油そば(煮干し油そば)である。

工程

  1. 事前に煮干し油を作っておく。工程は以下。
    1. 煮干し魚を油に入れて、火にかける。弱火にし、煮干し魚が焦げないようにする。
    2. 泡が少し出てきたぐらいで温度を保ち、5~10分ほど火を通す。(高温になるとすぐに煮干しが焦げるので注意)
    3. 煮干しを取り除いて保管する。
  2. 麵以外の具が欲しい場合、事前に準備しておく。
  3. 油そばのタレを器に入れる。煮干し油1:醤油0.8:酢0.2ぐらいの割合が一例。一食で煮干し油は35~40mlぐらい。
  4. 麵を茹でる。
  5. 麺を容器に入れて、よく混ぜる。混ぜまくるのが大事。
  6. 具を入れて完成。

パラメーターの例

    • 基本的には極太麺や平打ち麺が合う。
    • スーパーで売っているものでもおいしいが、麺専門店で買った極太麺はかなり旨い。
  •  煮干し油
    • 煮干しを油にどのぐらい入れるか。(私は大体油100mlに10尾ほど入れてると思う)
    • 煮干しを油に入れる時、煮干しの頭や内臓を取っておくか、そのままにするか。(取っておくとさっぱりした味わい、一尾丸ごと入れるとパンチの効いた味わい)
    • どのぐらい時間をかけて火にかけたか。
  • 醤油
    • 醤油の量、種類
    • 火入れしたか、していないか
    • 酢の種類(おすすめはリンゴ酢)
    • 酢をいつかけたか(食べる直前に入れる、食べながら入れる、など)
    • イデア次第で色々な可能性がある。
    • 細ネギだけでもあると、大分雰囲気が出る。
    • 玉ねぎを入れるなら、スライスして水にさらして絞っておくのがおすすめ。
    • 鶏チャーシュー(鶏胸肉を水450ml&塩30gで20分茹でる)をサイコロ状にカットして混ぜ込むのもよい。
    • おろしニンニクを入れると一気にパンチが出る。
    • 他、しらす、卵黄、のり、白ネギ、パクチー……など色々な可能性がある。
    • 具が多い時にはタレを増やしてもよい。
    • タレに胡椒や花椒を足してみるのもいい。

油そばのすすめ

 油そばは、かなりシンプルで簡単に作れるので、料理が初めてという人にもおすすめだ。私もまだ煮干し油でしか作ったことが無いので、他の味付け油でも試してみたい。あと、このレシピは「醤油」の味が要素として大きいので、いつか高級な醤油を買って試してみたいと思っている。

 自分で作るようになってから、油そば屋にはほとんど行かなくなった。外食の油そば屋は、「パンチのある味」を目指している場合が多く、私には少し重すぎることが多い。上のメニューも健康的とは言えないかもしれないが、無化調だし、全体量も自分で調節できるし、十分に満足できる味になる。

 また、たまに外食で美味しい油そばに巡り合った時には、それがどういう味の構成になっているのか、自分なりに研究することができるようになっている(最近だと、近所の居酒屋に出ている鴨油を使った油そばがかなり旨かった)。つまり、料理のパラメーターを把握することで、自分で料理をするときだけではなく、人の料理を食べる時や外食する時にも、ちょっとした楽しみが生まれるということだ。

 それは大げさに言えば、食事をただ消費するだけでなくて、その工程や由来、歴史に向き合う一つの方法なのかもしれない。 

(棋客)