達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

盧文弨と疏・経典釈文の単行説(補遺)

前回の記事について、有志の方より、「『経典釈文』の単行については、清初の頃から知られていたのではないか」とコメントを頂きました。少し調べてみたところ、あくまで一例ですが、以下のような言及例がありました。 顧炎武『亭林文集』巻二 音學五書後序 …

盧文弨と疏・経典釈文の単行説

現在は経・注・疏が合刻された形で見ることの多い「十三経注疏」ですが、かつては「疏」は単行していたことがよく知られています。一般に「単疏本」と呼称される形態です。 では、清朝考証学者の間で、この「疏の単行」を最初に取り上げたのは誰だったのかと…

阮元「塔性説」―仏典の漢訳にまつわる話

自宅のプリント整理に勤しんでいたところ、数年前に大学の演習で阮元「性命古訓」を扱った関係で、少しだけ自力で読んでいた阮元「塔性説」のコピーが出てきました*1。少し調べてみると、王國維『靜庵詩文集』にも少し言及がある文章のようです。 論旨が明快…

勝手気ままな訳書紹介―『荘子』

ここ一年ほど、演習で『荘子』を読んでいる関係で、『荘子』の訳本を色々と見比べる機会が多くありました。もちろん、基本的には『荘子集釋』などから自分なりに訳を作っているのですが、どうにもしっくりこない場合、先人の意見を眺めてみるのも楽しいもの…