達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

北京・天津旅行③―国家図書館・国家典籍博物館

北京・天津旅行の第三回。中哲ブロガーらしく、国家図書館に行ってきましたので、そのレポートです。 ①国家図書館 イマイチな写真しかありませんでしたが、北館・南館に分かれていて、非常に規模の大きい図書館です。水など荷物は持ち込めるものが少ないので…

宋人之改竄《經典釋文》

久々に、専門的な内容で書いてみます。『尚書』の以下の一節について。 『尚書』益稷(阮元本・巻五・四葉裏) 予欲觀古人之象、日月星辰山龍華蟲、作會。宗彝藻火粉米黼黻、絺繡。 句点の区切り方は諸説あるようです。本題にこの内容はあまり関わらないので…

北京・天津旅行②―交通手段いろいろ

北京・天津旅行振り返りの第二回。今回は、実際に使った交通手段をまとめておきます。 ①高速鉄道(高鉄) 飛行機の格安便は「天津着」ということがよくありますので、北京に行く場合は移動が必要になります。天津から北京までは、高鉄(日本でいう新幹線)で…

北京・天津旅行①―食事振り返り

さて、Twitterでは時々つぶやいていましたが、2019/10/18-10/28の間、本ブログの中の人二人で、北京・天津へと旅行に行ってきました! 写真を沢山撮ったので、忘れないうちに振り返っておこうと思います。 第一回は、食事篇になります。 旅行中に食べた思い…

考証学読書会(4)―『經義述聞』第一・周易上

前回の続き。以下は全て王引之の書いたところです。 引之謹案、用者、施行也。【原注:『説文』「用、可施行也。」】「勿用」者、無所施行也。文言曰「潛之為言也、隱而未見、行而未成、是以君子非用也。」正謂君子不施行也。孔穎達『正義』曰「聖人雖有龍德…

考証学読書会(3)―『經義述聞』第一・周易上

先日、中国に行って参りました。その訪問記を現在執筆中ですが、まだ完成していないので、とりあえず最近読書会で読み進めた文章をそのまま載せておきます。ちなみに、読書会は外部の方を交えて夏休みの間に開催しておりました。 以下の記事に引き続き、王引…

仁義とは結局なんだったのか?という初歩的すぎる問題-『孟子』を読む-(3)

前回、孟子は民衆の負担を考えずに戦争を好む恵王を厳しく批判し、自身の考える理想の政治について熱くかたりました。 孟子の熱い演説に押されて、恵王は少し弱気になり始めます。 〔原文〕 梁惠王曰「寡人願安承教。」 孟子對曰「殺人以梃與刃、有以異乎。…

仁義とは結局なんだったのか?という初歩的すぎる問題-『孟子』を読む-(2)

前回は、国を運営する上では利よりも仁義を優先するべきだと説いた話。それから、民衆の支持があってこそ国は成り立っているという話でした。今回も、孟子と梁の恵王の対話が続きます。 孟子に、民衆の支持が重要だ、と言われた恵王は、民衆の支持について孟…

『説文解字』公開画像データ一覧

以前、『説文解字』に関して、このような記事を書きました。 chutetsu.hateblo.jp この記事でも少し触れましたが、『説文解字』の版本の変遷というものはとにかくややこしいものです。自分で調べていてかなり混乱してきたので、特にオンライン公開されている…

仁義とは結局なんだったのか?という初歩的すぎる問題-『孟子』を読む-(1)

「仁義」という言葉は、誰でも聞いたことがあると思います。では、「仁義」という言葉の出典は、どこでしょうか。 答えは、『孟子』です。『孟子』の冒頭にある、梁国の恵王と孟子の対話に「仁義」という言葉が出てきます。今は分かりませんが、少なくとも私…

「中国基本古籍庫」という漢籍データベースに関する基本情報

皆さんは、「中国基本古籍庫」、通称「古籍庫」という漢籍データベースをご存じでしょうか。古籍庫は、中国で開発された有料の漢籍データベースです。やや誤字が多いのですが、割とマニアックな文献まで電子化しており、検索してテキスト化された原文をコピ…

頼惟勤『説文入門』を読む(二)

前回の続きです。 『説文解字注』一篇上 一、惟初大極、道立於一、造分天地、化成萬物。 前回書いたように、『説文入門』での結論は「唐石經・岳本・釋文所據など、『易』として古い系統のものは「太」でなく「大」であるから、段氏は「大」の字を用いたのだ…

頼惟勤『説文入門』を読む(一)

『説文解字』並びに段玉裁『説文解字注』に関する、“高度に学術的な入門書”(語義矛盾にあらず)といえば、頼惟勤先生の監修にかかる『説文入門』(大修館書店、1983年)が有名です。参照→『説文入門』 | 学退筆談 本書の第三章「段注の実際」の第三節は「段…

銭大昕「與段若膺論尚書書」について

最近、訳あって銭大昕「與段若膺論尚書書」を読んでいます。これは銭大昕が段玉裁と『尚書』に関して議論を交わした書簡であるということで考証学史において重要であると同時に、内容自体もなかなか興味深い書簡です。 もとは、四部叢刊本『潜研堂文集』で読…

「達而録」活動記録

ここ1~2年の間、ネット上の中国学界隈で、色々と新しい企画が始動しています。私が直接見知った人が行っているものだけでも、このようなものがあります。 ・東洋史の院生botさん:「宮崎市定『科挙』を読む会」等の読書会。・中国史史料研究会さん:学会…

地元の儒者を尋ねて―「亀井南冥」篇・おまけ

中哲ブログということで、前回までの記事の中に出てきた「典拠のある言葉」を、少し振り返ってみましょう。 まず、修猷館の「修猷」という言葉。これは『尚書』 微子之命の一節を踏まえる言葉です。修猷館高校の公式サイトには、このように書かれています。 …

地元の儒者を尋ねて―「亀井南冥」篇・下

前回の続き。同じ部分図を掲げておきます。全体は→[福岡城下町・博多・近隣古図] - 九大コレクション | 九州大学附属図書館 今回は地図の下側に見える「今川橋(旧今川橋)」が出発地点。 今では「裏通り」と呼ばれ、写真でも完全な裏道に見えるこの道、実…

地元の儒者を尋ねて―「亀井南冥」篇・上

つい先日、研究室に届いた雑誌『斯文』134号を見ていたところ、牧角悦子氏の「鎮西の儒侠・亀井南冥の為人と学問」(オンライン公開なし)という文章に出くわして、大変驚きました。 というのも、中の人の一人の実家近くに亀井南冥のお墓があり、幼いころか…

『中国思想史研究』の一部リポジトリ化!

一年ほど前の話になりますが、京都大学文学研究科中国哲学史研究室の発行する学術雑誌『中国思想史研究』が、京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」にてオンライン上で公開されました。(現時点では未公開の論文もかなり多いです。特に古いもの。) リポジ…

句読の難―『困学紀聞』と『尚書大伝』(下)

前回の続きです。 回りくどい話をしてきましたが、ここで登場するのが、丁杰(乾隆3年-嘉慶12年、1738-1807)です。まずは伝記資料から、彼の功績を確認してみましょう。 『文獻徵存録』卷七 丁杰、字升衢、歸安人。少以清苦建志、家貧不能得書。日就書肆中…

ブログ開設一周年!

「達而録」を開設してから、丸一年が経過いたしました! 毎週更新というハードルは、最初は楽勝かと思っておりましたが、内容の「面白い」ものを目標としつつ(現実に面白いかはともかく)、分量もそれなりにあるものを書くとなると、正直かなりきつい、とい…

句読の難―『困学紀聞』と『尚書大伝』(上)

以前、「考証学における学説の批判と継承」と題して、『尚書』のある一条を題材に取り、考証学者たちの学説の変化を追ってみました(全五回)。この調査は、環境さえ整っていればそれほど難しいものではないのですが、なかなか興味深い結果が出てくることも…

考証学読書会(2)―阮元「王伯申經義述聞序」下

前回の続き。 嘉慶二十年、南昌盧氏宣旬讀其書而慕之。旣而伯申又從京師以手訂全帙寄余。余授之盧氏。盧氏於刻『十三經注疏』之暇、付之刻工。伯申亦請余言序之。 王引之による『経義述聞』の自叙の執筆は、嘉慶2年(1797年、王引之32歳)の時ですが、 阮元…

考証学読書会(1)―阮元「王伯申經義述聞序」上

暫く休止状態にあった漢文読書会を再開いたしました!(参加者募集中です)。 今年は、考証学者の文章を中心に読み進めることにいたします。折角の機会ですので、時間が取れる限りは、復習を兼ねて読んだ部分を振り返ってみることにします。 今回読んだのは…

京大中華街探訪録

ここ最近、京都大学から五分ほど北に歩いた「田中里ノ前交差点」近辺に、中華料理屋が乱立しています。 これは、京都に拠点を置く中国古典愛好家である我々としては、決して看過することのできない大問題です。その謎を探るべく、我々は暴飲暴食を重ねました…

喬秀岩「經學與律疏」―論文読書会vol.12

※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 喬秀岩「經學與律疏」(『北京讀經説記』萬巻樓2013、初出『隋唐五代經学國際研討会』文哲所出版2009) 【概要】 喬氏は南北朝の義疏学から『五経正義』に至る学術史の研究を進めてきた研究者。唐…

盧文弨と疏・経典釈文の単行説(補遺)

前回の記事について、有志の方より、「『経典釈文』の単行については、清初の頃から知られていたのではないか」とコメントを頂きました。少し調べてみたところ、あくまで一例ですが、以下のような言及例がありました。 顧炎武『亭林文集』巻二 音學五書後序 …

盧文弨と疏・経典釈文の単行説

現在は経・注・疏が合刻された形で見ることの多い「十三経注疏」ですが、かつては「疏」は単行していたことがよく知られています。一般に「単疏本」と呼称される形態です。 では、清朝考証学者の間で、この「疏の単行」を最初に取り上げたのは誰だったのかと…

阮元「塔性説」―仏典の漢訳にまつわる話

自宅のプリント整理に勤しんでいたところ、数年前に大学の演習で阮元「性命古訓」を扱った関係で、少しだけ自力で読んでいた阮元「塔性説」のコピーが出てきました*1。少し調べてみると、王國維『靜庵詩文集』にも少し言及がある文章のようです。 論旨が明快…

勝手気ままな訳書紹介―『荘子』

ここ一年ほど、演習で『荘子』を読んでいる関係で、『荘子』の訳本を色々と見比べる機会が多くありました。もちろん、基本的には『荘子集釋』などから自分なりに訳を作っているのですが、どうにもしっくりこない場合、先人の意見を眺めてみるのも楽しいもの…