今日は、私が好きなお笑いコンテンツの「タイマン森本」の好きな回について語ってみたい。 「タイマン森本」とは、「トンツカタン」というお笑いトリオグループの森本さんが、他のお笑い芸人を一人ゲストに呼んで、その人に百回ツッコミを入れたら終わり、と…
前回に引き続き、工藤万里江『クィア神学の挑戦』を読んで、自分の研究に引き付けられるところがあるか考えていく。今回は、第四章「下品な神学――マルセラ・アルトハウス=リード」をまとめてみる。 アルトハウス=リードがいう「下品な神学」とは何か。その…
最近、工藤万里江『クィア神学の挑戦―クィア、フェミニズム、キリスト教』(新教出版社、2022)を読んでいて、自分の研究と絡めて考えたことがあるので、少しだけメモしておく。まず、第一章「クィア神学の歴史と課題」の第三節「クィア神学とフェミニスト神…
先日、衆議院選挙が行われました。選挙前に政権交代の機運があり、関心の高い選挙という位置づけだったはずで、実際熱気を感じるところもありましたが、結局のところ投票率はさして高くありません。投票率の低さは「政治への無関心」の指標として捉えられる…
今月も、博論の校正作業の合間に、過去に準備していたWikipediaの記事をいくつか完成までもっていきました。 ジェンダー・トラブル - Wikipedia新規立項です。「新着記事」「良質な記事」に選出されました。フェミニズム・クィア関連の思想書の記事が、日本…
京都大学学術出版会からは、「プリミエ・コレクション」というシリーズが継続的に出版されています。このシリーズは、若手研究者の初の単著を出版することが多く、上質な研究書を多く世に送り出していることで知られています。本ブログで紹介したことがある…
ジュディス・バトラー『分かれ道 ―ユダヤ性とシオニズム批判―』(大橋洋一・岸まどか訳、青土社、2019)を少しずつ読み進めている。まだ半分も読み終えていないのだが、ひとまず「はじめに」の内容をもとに、簡単なメモを残しておく。 〇本書の主眼 本書の狙…
ガザでの戦闘が激化してから一年が経ちました。イスラエルによるパレスチナへの入植は、1年どころか、70年前から始まったことであり、この一年にフォーカスを当てること自体が、すでに一種のウォッシングであり、加害的な言説なのですが、あまりにひどい惨状…
またDiffの記事を書きました。この一か月間はかなり精力的にWikipedia執筆に取り組んだので、その成果や、その時に考えたことをメモしています。特に、「プロジェクト:LGBT - Wikipedia」の整備について詳しく書いています。 diff.wikimedia.org 以下、Diff…
ウィキメディアに関する情報を掲載するメディアの「Diff」に記事を書きました。中国古典の版本・影印本・標点本などの整理にWikidataが使えるのではないか、というアイデアです。実践したいところですが、一人でやるのはあまりに面倒だったので、やるなら興…
これまで、自分の好きな歌の歌詞を再解釈することを何度か試みてきた(埋没しないマイノリティ〜the pillows「ストレンジカメレオン」、その「笑い」はどこから来たものですか〜KASHIKOI ULYSSES「feelings, NONAME」)。今日は、あまりに今更すぎて恥ずかし…
前回の最後で述べた「安心」と「安全」の違いについて、考えたことを書く。まずは、東大パレスチナ連帯キャンプの「セイファーテント」の声明文の全文を以下に転載する(https://www.instagram.com/ut4palestine/p/C7nsn8HB4rD/?locale=de-DE&img_index=1 よ…
藤高和輝『バトラー入門』(筑摩書房、2024)を読んだ。ちなみに藤高さんの文章は、以前別のものを紹介したことがある。 藤高和輝「パスの現象学―トランスジェンダーと「眼差し」の問題」 - 達而録 私は、バトラーの『ジェンダー・トラブル』で論じられてい…
前回の続き。江原由美子「『差別の論理』とその批判―『差異』は『差別』の根拠ではない」(『増補 女性解放という思想』ちくま学芸文庫、2021)、今回はp.137-153を読んでいく。 〈差別の論理の不当性〉 以上をまとめると、「反差別言説の困難さ」は、「差別…
前回の続き。江原由美子「『差別の論理』とその批判―『差異』は『差別』の根拠ではない」(『増補 女性解放という思想』ちくま学芸文庫、2021)、今回はp.128-137を読んでいく。 〈差異は差別の根拠ではない〉 差異の内容に詳しく立ち入って論じることは、「…
江原由美子「『差別の論理』とその批判―『差異』は『差別』の根拠ではない」(『増補 女性解放という思想』ちくま学芸文庫、2021)、今回はp.122-128を読んでいく。 ※前回→江原由美子「『差別の論理』とその批判―『差異』は『差別』の根拠ではない」(1) - 達…
江原由美子「『差別の論理』とその批判―『差異』は『差別』の根拠ではない」(『増補 女性解放という思想』ちくま学芸文庫、2021、初出1985)を読んだ。本著は、そもそも「差別」とは何かということを論じる論文で、流れるような緻密な論理展開から、「差別…
数回前の記事で、近年の中国学研究における異性愛規範・性愛規範の批判や、ジェンダー史研究の批判を試みたいという話を書いた。今回は、自分が具体的にどういうところに違和感を持っているのか、実際の研究を取り上げてみたい。 今回は、川合康三「中国文学…
前回の続きで、橋本秀美『論語―心の鏡』(岩波書店、2009)の内容面(つまり橋本先生の解釈の実践)についてもう少し考えてみる。かなり批判的な言及になったが、本著が『論語』と中国古典の解釈の営みを見事に言語化した名著であり、初学者の方に勧めたい本…
前回の続きとして、そもそも(中国)古典を解釈するとはどういうことか、ということについて、橋本秀美『論語―心の鏡』(岩波書店、2009)を見ておく。以下は、王念孫の経書解釈法について論じた一段の、まとめとなる部分である。(p.163-164) 結局、解釈にお…
突然だが、最近、自分の研究の今後の方向性をあれこれ考えている。内容的に、相談できる相手もあまり思い浮かばないし、ここに放流しておきたい。 私の博論のテーマは、後漢の鄭玄とその後の経学の展開(義疏など)についてである。色々なことを書いたのだが…
前回に続いて、小松原織香『性暴力と修復的司法:対話の先にあるもの』を読み進めていく。今回は、第三章「「対話する主体」と性暴力」を中心に紹介していく(p.97-)。論旨としては、性暴力被害者は「語る主体」になることで、回復する主体・告発する主体・…
小松原織香『性暴力と修復的司法:対話の先にあるもの』(成文堂、2017)を読んだので、概要の紹介と自分の感想を書く。小松原さんの本は、他に『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022)を読んだことがある。『性暴力と修復的司法』はアカデミックな書体で書…
前回に続いて、山家悠平『生き延びるための女性史』の内容を紹介していく。今回は第四章と第五章の感想を書く。 第四章「遊郭のなかの「新しい女」」 青鞜社の女性たちは、「新しい女」という揶揄を肯定的な意味で自ら積極的に名乗るようになったが、それと…
山家悠平『生き延びるための女性史―遊郭に響く〈声〉をたどって』(青土社、2023)を読んだ。殺気迫る珠玉の論考の数々で、まさに「生き延びるため」に書かれた本、言い換えれば、言葉を綴らなければ社会に殺されると実感している人の叫びが、ひしひしと伝わ…
最近、「弁護士 師子角允彬のブログ」をよく読んでいます。弁護士の方がさまざまな判例を紹介しているブログなのですが、大学に関わる事例が多くて勉強になります。 たとえば、「非常勤講師」で検索をかけるとこういった記事が出てきます。 厳格に成績評価を…
陳佑真『三蘇蜀学の研究』(京都大学学術出版会、2024)を購入し、少しずつ読み進めています。著者の陳さんは私の先輩で、本当にたくさんのことを教えていただいた方です。あまりまとまっておらず、メモ書き程度にしかなりませんが、内容について印象に残っ…
友人に勧められて、『少女革命ウテナ』を見始めた。いま13話まで観終えたところ。 ざっと観た印象は、色々な意味でまさに「古典」というべき作品で、さまざまな方向に解釈が開かれた作品だと感じた。台詞が少なく無駄がないし、伏線を多く張って「ああ、多分…
いま、「All eyes on Rafah」のAI画像がものすごい勢いでシェアされまくっている。→「All Eyes on Rafah」のAI画像、なぜ世界中に広まったのか - BBCニュース すでに、この画像が拡散されていることについて意見はあちこちで交わされているが、私も自分なり…
最近、ジェームズ・C・スコット『ゾミア―― 脱国家の世界史』(みすず書房、2013)を少しずつ読んでいます。とても長い本で、まだ読み終えてはいないのですが、読みごたえがあって面白い本です。全体の枠組みと、過去の研究、そして筆者のフィールドワークが…