達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

読書案内

頼惟勤『説文入門』を読む(一)

『説文解字』並びに段玉裁『説文解字注』に関する、“高度に学術的な入門書”(語義矛盾にあらず)といえば、頼惟勤先生の監修にかかる『説文入門』(大修館書店、1983年)が有名です。参照→『説文入門』 | 学退筆談 本書の第三章「段注の実際」の第三節は「段…

『中国思想史研究』の一部リポジトリ化!

一年ほど前の話になりますが、京都大学文学研究科中国哲学史研究室の発行する学術雑誌『中国思想史研究』が、京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」にてオンライン上で公開されました。(現時点では未公開の論文もかなり多いです。特に古いもの。) リポジ…

勝手気ままな訳書紹介―『荘子』

ここ一年ほど、演習で『荘子』を読んでいる関係で、『荘子』の訳本を色々と見比べる機会が多くありました。もちろん、基本的には『荘子集釋』などから自分なりに訳を作っているのですが、どうにもしっくりこない場合、先人の意見を眺めてみるのも楽しいもの…

漢文に興味がある高校生向けの入門書紹介3(角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス)【中国史編】

「角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典」の中から、第1回では文学書を、第2回では思想書をまとめました。第3回では歴史書をまとめています。1~3を合わせると「角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典」を全て網羅すること…

漢文に興味がある高校生向けの入門書紹介2(角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス)【中国哲学(思想)編】

高校の漢文と大学の漢文には、大きな違いがあります。私個人の実感では、高校漢文と大学漢文は、その「難易度の違い」の前に、その「方向性の違い」がより大きいように思います。大学で専門的に漢文を学んだ者として、今回は両者の違いについて、少し考えて…

漢文に興味がある高校生向けの入門書紹介1(角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス)【中国文学編】

中学・高校の授業で、英語や数学が好きだという人は沢山いるかも知れませんが、漢文が一番好きだ得意だという高校生はなかなか奇特だと思います。嫌中本が売れたり、元号の出典が政治的に和書だと決定されたりするこのご時世に、「漢文が大好きだ」なんて堂…

小倉芳彦『古代中国を読む』

前回、小倉芳彦『古代中国を読む』(岩波新書、1974)・(論創社、2003)を話題に出すに当たって、数年ぶりに読み返してみました。やはり、何度読んでも面白いものです。 折角ですので、少し引用しながら紹介してみます。 前回、この本は「小倉氏の研究者と…

『左伝』の訳書と概説書の紹介

とある方にリクエストを受けて、『春秋左氏伝』の訳書や概説書の手引きを作ってみることにしました。(この方の学識には及ぶべくもないのですが、何故私が…。)週一回更新を守りたいのですが常にネタ切れ気味ですので、何か良いネタがありましたら教えてくだ…

広島大学の動画「中国思想文化学入門」を見て自分で勉強をしてみたくなった人のための参考書

lHiCE003: 中国思想文化学入門 Twitterで上記の動画(HiCE003: 中国思想文化学入門、広島大学が公式に公開している有馬卓也先生の講義)を紹介したところ、予想外に多くの反響がありました。この動画は、先秦から漢代にかけての「天」と「命」に焦点を当てな…

濱久雄『中国思想論攷―公羊学とその周辺』

本日は、終戦直後に大学を卒業し、自作農として晴耕雨読の生活を送りながら漢文に親しみ、後に研究の世界にカムバックした研究者のお話。 濱久雄『中国思想論攷―公羊学とその周辺』(明徳出版社、2018)のあとがきを一部引用します。 翌日の朝、池袋駅につき…

平岡武夫『経書の成立』

本日は平岡武夫『経書の成立』(創文社、1983)の「初版刊行の記」を読んでみます。出土以前の経書研究として手堅い名著と言えましょうが、戦火で原稿が文字通り焼失し、何度も出版が潰えながらも上梓された書籍でもあります。 大阪が空襲に遭い、印刷所も罹…

大濱晧『朱子の哲学』

私は研究書を読むとき、ついつい「あとがき」を先に読んでしまうタイプです。特に大家と呼ばれる先生の晩年の著作となると、他の有名な先生の若かりし頃のお話が載っていたりして、なかなか興味深いものです。基本的に研究の足しになるものではないのですが…

年末年始に勝手におすすめする中哲本三選

みなさん、寒くなってきましたね。年末年始の長期休暇は、中国哲学を勉強するちょうど良い機会だと思います。時間をかけてじっくり読んでみてください。 内山俊彦『荀子』(講談社学術文庫) たった300頁ほどの文庫本の中に、荀子の自然観・人間観・国家…

中国学と円城塔『文字渦』(下)

前回はこちら 『文字渦』について引き続き語ってみます。 少し内容に踏み込んで書くとは言ったものの、短編集でありながらそれぞれが緩やかに関連を持ち大きな世界を作っているこの作品自体の枠組みの話は、私には手に余る代物です。今後何度も読み返す中で…

中国学と円城塔『文字渦』(上)

中国学の面白さを、一般の方々にどう伝えるのか? ―言い換えれば、中国学の魅力を如何に発信するか― これは長きに渡って、多くの研究者が苦悩してきた問題ではないでしょうか。これはもちろん、そんなことを考えずに、只管に自身の研究に打ち込んでゆく姿を…

井筒俊彦の学問における自己認識

前回はこちら 過去三回にわたって、井筒俊彦『意識と本質―精神的東洋を索めて』 (岩波文庫)について紹介してきた。ところで先日、図書館で偶然『井筒俊彦全集』を見つけ、ぱらぱらと眺めていたところ、非常に面白い文章を見つけた。今回はそれを紹介しようと…

井筒俊彦『意識と本質』(3)普遍的「本質」論の三型

前回はこちら お盆の帰省中に、井筒俊彦『意識と本質―精神的東洋を索めて』 (岩波文庫)を読んだので、備忘録として記事を書こうと思う。その第3回。 前回は、「本質」には、普遍的「本質」と個別的「本質」がある、という議論だった。井筒は、普遍的「本質」…

井筒俊彦『意識と本質』(2)宋学と物のあわれ

前回はこちら お盆の帰省中に、井筒俊彦『意識と本質―精神的東洋を索めて』 (岩波文庫)を読んだので、備忘録として記事を書こうと思う。その第2回。 前回は、老子と大乗仏教の本質論についてだった。今回は、本居宣長を例に、日本的本質論が展開される。 中…

井筒俊彦『意識と本質』(1)老子と大乗

お盆の帰省中に、井筒俊彦『意識と本質―精神的東洋を索めて』 (岩波文庫)を読んだので、備忘録として記事を書こうと思う。 さて、本書は、「東洋哲学全体を、その諸伝統にまつわる複雑な歴史的聯関から引き離して、共時的思考の次元に移し、そこで新しく構造…

勝手気ままな「訳書」紹介―『孟子』

こちらも『論語』ほどではないですが、多種に渡っています。『論語』に比べると長い本なので、抄訳もちらほら見受けられます。 有名な話ですが、最も一般に流布している小林勝人訳(岩波文庫、1968)は、批判の多い著作です。吾妻重二「岩波文庫『孟子』を疑…

勝手気ままな「訳書」紹介―『論語』

日原利国氏が「碩学といわれるほどの大先生は、みな『論語』の訳注をされる、と聞かされ」*1たと述べる通り、『論語』の訳本は非常に多く存在します。一般向け・専門向けも入り混じっており、どうまとめるのが良いのか悩みどころ。全てを時代順に並べても、…

勝手気ままな「訳書」紹介―前置き

中国思想を専門とする研究室には、よく「良い訳書を教えてほしい」という声が届きます。しかし著名な古典となると数々の学識の高い先生が訳されていますから、一概にどれが良いとは言い難いものです。それは単に訳の良し悪しではなく、元々の方針の違いに由…

川原寿市『儀礼釈攷』自序を読む

十三経の中でも屈指の難読とされる『儀礼』については、現在では日本語でも数種の解説書が出ています。その端緒に位置づけられるのが川原寿市『儀礼釈攷』です。 この本は完成当時は大々的には版行されず、ガリ版で数十部刷るのみであったようです。その後朋…