達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

礼学

東房・室・西房(2):礼学の議論の一例

前回の続きです。ここまでの説を整理すると以下です。 鄭玄説:卿大夫以下の場合、西室・東房の二部屋。 陳祥道説:卿大夫以下も、天子諸侯と同様に、西房・室・東房の三部屋。 この説の相違について質問した萬斯同に対する、黄宗羲の答えが以下。 ・黄宗羲…

東房・室・西房(1):礼学の議論の一例

最近、宮室の構造について色々調べる機会があったので、つらつらと書き連ねていきます。ここ数回の記事は「礼」をテーマとするものが多いですが、今回もその一環で、礼学の議論とは具体的にどのようなものなのか、その一端をご紹介します。 宮室の構造につい…

『礼記』を実際に読んでみる(1)

前回、『礼記』の全体の構成を紹介しました。今回は、『礼記』の内容を少し紹介してみます。 『礼記』の内容と言っても、前回書いたように、『礼記』はさまざまな内容を含む雑記という感じの本です。まず今回のところは、その「雑駁な雰囲気」を感じていただ…

漢文を初めて学ぶ人に向けて:『礼記』について

前回、経書について簡単な整理をしておきました。今回は、そのうちで一番複雑と言ってもよい本である『礼記』を紹介します。 『礼記』が一番複雑であるというのは、他の経書は一書の中で一つのまとまり、一つの体裁があって、一応一つの「著作」という感じを…

「曲礼」について(下)―『礼記目録後案』より

前回の続きです。「曲禮」についての考察が進みます。 【第三節】 ①按「曲禮」之名見于《禮器》、曰「經禮三百、曲禮三千」、而《中庸》作「禮儀」「威儀」。鄭君以禮經為《周官》、曲禮為《儀禮》、蓋尊尚《周官》以成三《禮》之名。 然《周官》戦國之書、…

「曲礼」について(上)―『礼記目録後案』より

『礼記』は経書の一つですが、成立過程が複雑であり、全体で体系だった書になっているというわけではありません。『礼記』を構成する四十九篇のなかには、祭祀に関する「祭法」「祭義」、喪服に関する「喪服小記」「服問」、子思学派の著作とされる「中庸」…

顧千里『撫本禮記鄭注考異』と段玉裁、そして王念孫(5)

前回の続きです。 ここまで書いて少し先行研究を調べてみたところ、武秀成「段玉裁“二名不徧讳说”辨正」(『文献』2014年02期)に、他説も加えた上でかなり詳しく整理されていることに気が付きました。ぜひ、こちらもご参照ください。 段玉裁“二名不徧讳说”…

顧千里『撫本禮記鄭注考異』と段玉裁(4)

続きです。前回はこちら。 且千里又云「偏者、唐律謂之偏犯。『疏義』云、偏犯者、謂複名單犯、不坐。」 愚按、此「奏事犯諱」條、「二名偏犯不坐」、自是唐人語、用禮「不徧諱」之意、而非用禮之「偏諱」字。如千里説、「偏犯」卽禮之「偏諱」、然則經云「…

顧千里『撫本禮記鄭注考異』と段玉裁(3)

今回は、前回紹介した顧説に猛反対した段玉裁の説を整理しておきましょう。長いので、少しずつ切りながら見ていきます。 段玉裁『經韵樓集』巻十一・二名不徧諱説 曲禮曰「不諱嫌名、二名不徧諱。」各本徧作偏。今按、以徧爲是。注曰「嫌名謂音聲相近、若禹…

顧千里『撫本禮記鄭注考異』と段玉裁(2)

第1回はこちら 今回は、顧千里説を整理しておきましょう。 ざっと経緯を整理しておくと、『十三経注疏校勘記』の原稿の完成は嘉慶十一年、張敦仁が宋撫州本『礼記』を影印し顧千里によって『考異』が書かれたのも同年、段玉裁の反論が嘉慶十二年の書簡です。…

顧千里『撫本禮記鄭注考異』と段玉裁(1)

顧廣圻(字は千里、1766-1835)は、清朝考証学を代表する文献学者の一人です。段玉裁(1735-1815)に激賞され、『十三経注疏校勘記』の作成などに従事し、『説文解字注』の校勘者としても名前が見えています。 しかし、顧千里と段玉裁はいくつかの学説を巡っ…

「禜祭」について(4)

禜祭について、第四回です。第三回はこちら。 孫詒讓『周禮正義』黨正に引かれる金鶚の説は、もと金鶚『求古録禮説』卷六の「禜祭考」に載せられているものです。 これは、その名の通り「禜祭」の専論です。「最初にこれを読みなさい」と言われそうですが、…

「禜祭」について(3)

「禜祭」について、第三回です。前回はこちら。 まず、『周禮』鬯人から。鬯人は、祭祀の際に用いる酒やその酒器を掌る官です。前回同様、孫詒譲『周禮正義』を見ていきます。 『周禮正義』春官・鬯人 〔經〕鬯人掌共秬鬯而飾之。凡祭祀、社壝用大罍、禜門用…

「禜祭」について(2)

「禜祭」について。前回の続きです。 段注の最後に「『周禮』注引・・・」とありました。ということは、『周禮』に関連する記載があるということです。実際、調べてみると、禜祭の記載は『周禮』の中に数ヶ所あります。 「経学とは礼学である」というのはよ…

「禜祭」について(1)

以前棚上げにしておいた、「禜祭」について整理してみました。こういうことを調べる時にはどのようにするのか、参考までにご覧ください(あくまで現時点での私の方法ですが)。全四回の記事で、『説文解字注』『周禮正義』『求古録禮説』などを扱いました。 …

大坊眞伸「『禮記子本疏義』と『禮記正義』との比較研究」―論文読書会vol.10

※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 大坊眞伸「『禮記子本疏義』と『禮記正義』との比較研究」(『大東文化大学漢学会誌』43号, p.79-110) 【先行研究(本論文の注より)】・鈴木由次郎「…

川原寿市『儀礼釈攷』自序を読む

十三経の中でも屈指の難読とされる『儀礼』については、現在では日本語でも数種の解説書が出ています。その端緒に位置づけられるのが川原寿市『儀礼釈攷』です。 この本は完成当時は大々的には版行されず、ガリ版で数十部刷るのみであったようです。その後朋…