達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

2018-01-01から1年間の記事一覧

大坊眞伸「『禮記子本疏義』と『禮記正義』との比較研究」―論文読書会vol.10

※「論文読書会」については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 大坊眞伸「『禮記子本疏義』と『禮記正義』との比較研究」(『大東文化大学漢学会誌』43号, p.79-110) 【先行研究(本論文の注より…

影山輝國「皇侃と科段説―『論語義疏』を中心に―」―論文読書会vol.9

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 影山輝國「皇侃と科段説―『論語義疏』を中心に―」(『斯文』122, 2013, p.1~14) 【先行研究】 ・喬秀岩『義疏学衰亡史論』(白峰社、2001) 南北朝から隋唐にかけての義疏学(特に…

溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節―論文読書会vol.8

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節 前回の続きです。 【要旨】 戴震の「私欲」理解 問、『論語』言「克己復禮爲仁」、朱子釋之云「己、謂身之私欲。禮者…

溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節―論文読書会vol.7

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 溝口雄三「中国前近代思想の屈折と展開」下論・第三章・第一節 今回・次回と二回に分けて、顏元から戴震に至る思想史を述べる部分を取り扱います。 【先行研究】 安田二郎「孟子字…

中国学と円城塔『文字渦』(下)

前回はこちら はじめに 『文字渦』について引き続き語ってみます。 少し内容に踏み込んで書くとは言ったものの、短編集でありながらそれぞれが緩やかに関連を持ち大きな世界を作っているこの作品自体の枠組みの話は、私には手に余る代物です。今後の人生で何…

中国学と円城塔『文字渦』(上)

中国思想をもっと身近に 伝えることの難しさ 中国学の面白さを、一般の方々にどう伝えるのか? ―言い換えれば、中国学の魅力を如何に発信するか― これは長きに渡って、多くの研究者が苦悩してきた問題ではないでしょうか。これはもちろん、そんなことを考え…

张升「陈名夏与龚鼎孳,阎尔梅’‘绝交’‘考」―論文読書会vol.6

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 【論文タイトル】 张升「陈名夏与龚鼎孳,阎尔梅’‘绝交’‘考」(『顾诚先生纪年暨明清史研究文集』p157~167) 【要旨】 陳名夏、江蘇溧陽人、清初の貳臣。龔鼎孳、安徽合肥人、清初の貳臣。閻爾梅、…

池田秀三「馬融私論」―論文読書会vol.5

※論文読書会については「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 池田秀三「馬融私論」(『東方學報』人文科学研究所、1980) 【要約】 馬融と鄭玄が師弟の関係にあったことはよく知られているが、実際に…

『世説新語』小噺

難解な記事が続いたので、たまには短くゆるく書いてみます。 『世説新語』のある逸話 『世説新語』には俗っぽい話が多く、「その気持ち分かる!」と思わず共感してしまうエピソードに時折ぶつかります。折角ですので、少し紹介してみます。 本日は、学者とし…

中純夫『劉宗周の陽明学観について-書牘を中心として-』―論文読書会vol.4

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 中純夫『劉宗周の陽明学観について-書牘を中心として-』(『陽明学』14号、2002) 【先行研究】 難波征男「劉台念思想の形成―王学現…

勝手気ままな「訳書」紹介―『孟子』

こちらも『論語』ほどではないですが、多種に渡っています。『論語』に比べると長い本なので、抄訳もちらほら見受けられます。 ①小林勝人訳、宇野精一訳 有名な話ですが、最も一般に流布している小林勝人訳(岩波文庫、1968)は、批判の多い著作です。吾妻重…

勝手気ままな「訳書」紹介―『論語』

日原利国氏が「碩学といわれるほどの大先生は、みな『論語』の訳注をされる、と聞かされ」*1たと述べる通り、『論語』の訳本は非常に多く存在します。一般向け・専門向けも入り混じっており、どうまとめるのが良いのか悩みどころ。全てを時代順に並べても、…

勝手気ままな「訳書」紹介―前置き|中国思想の翻訳書について

はじめに 中国思想を専門とする研究室には、よく「良い訳書を教えてほしい」という要望が届きます。しかし著名な古典となると数々の学識の高い先生が訳されていますから、一概にどれが良いとは言い難いものです。それは単に訳の良し悪しではなく、元々の方針…

松島隆真『漢帝国の成立』―論文読書会vol.3

※論文読書会については、「我々の活動について」を参照。今回は、「膨大な先行研究をどうまとめて文章にするか」という技法を学ぶ目的だったので、要約は手薄です。 【論文タイトル】 松島隆真『漢帝国の成立』松島隆真『漢帝国の成立』・序論(京都大学学術…

川原寿市『儀礼釈攷』自序を読む

『儀礼釈攷』とは 十三経の中でも屈指の難読とされる『儀礼』については、現在では日本語でも数種の解説書が出ています。その端緒に位置づけられるのが川原寿市『儀礼釈攷』です。 この本は完成当時は大々的には版行されず、ガリ版で数十部刷るのみであった…

吉川忠夫「孝と佛教」―論文読書会vol.2

※論文読書会については「我々の活動について」を参照。今回は内容が難しく、誤解している箇所がありそう。 ※本論文はオンライン上で公開されています。 【論文タイトル】 吉川忠夫「孝と佛教」(麥谷邦夫『中国中世社会と宗教』同気社、2002) 【先行研究】 …

井上進「復社の學」―論文読書会vol.1

【論文タイトル】 井上進「復社の學」(『東洋史研究』44-2、京都大學、1989、後に『明清學術變遷史』第八章に収録) 【先行研究】 謝國禎『明清之際党社運動考』(商務印書館1934)小野和子「明末の結社に関する一考察」(『史林』45-2、3 1962)宮崎市定「…

我々の活動について

ブログを進めるにあたって、記事のもととなる我々の普段の活動について一括で説明しておいた方が何かと便利が良いので、ここに書いておきます。当たり前ですが、メンバー全員が同じ活動をしているわけではありません。 このページは適宜更新します。 1.演…

はじめに

ここは、中国学を志す者が集い、徒然なるままにあれこれと書き連ねる空間です。 運営者は、学生有志の数名です。我々は勉強と研究、即ち読書に努める毎日ですが、偶には「発信すること」を意識することで、自らの研究に良い面があるのではないか。そんなこと…