達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『毛詩』小雅・斯干疏・翻案

伝統的な経学において、宮室の構造について議論される際、鄭玄の唱えた「宗廟及路寢制如明堂」(「宗廟」と「路寢」の建物の制度は「明堂」と似ている)という説との関わりが常に問題になってくるようです。今回は、この問題について議論した『毛詩』小雅・…

「戸」と「牖」:礼学の議論の一例

前回の続きです。 長々と記事を書いてきましたが、次の話題の前提となる部分だけを整理しておきます。 ・「路寝」の奥の部屋の構造について(鄭玄説) ○天子・諸侯の場合:「室」(中央の部屋)と「西房」と「東房」(西側、東側の部屋)の三部屋。 ○卿大夫…

東房・室・西房(2):礼学の議論の一例

前回の続きです。ここまでの説を整理すると以下です。 鄭玄説:卿大夫以下の場合、西室・東房の二部屋。 陳祥道説:卿大夫以下も、天子諸侯と同様に、西房・室・東房の三部屋。 この説の相違について質問した萬斯同に対する、黄宗羲の答えが以下。 ・黄宗羲…

東房・室・西房(1):礼学の議論の一例

最近、宮室の構造について色々調べる機会があったので、つらつらと書き連ねていきます。ここ数回の記事は「礼」をテーマとするものが多いですが、今回もその一環で、礼学の議論とは具体的にどのようなものなのか、その一端をご紹介します。 宮室の構造につい…