達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

李業興と朱异の論争

最近、『北史』を眺めています。一つ、印象に残っている話を紹介します。(『魏史』でもほとんど同じ内容が載せられています。) 『北史』儒林伝上に、李業興という人の伝記が載せられています。彼は北朝の儒者の徐遵明に学んだ人です。北朝の多くの儒者は徐…

『公羊傳疏』引『孝経疏』について(3)

前回の続きです。まず、ここまで考察したことを整理しつつ、新たに気が付いたことを加えてお示しします。 ①『公羊疏』に「『孝経疏』を参照せよ」という文言がある(三例)ことから、『公羊疏』の著者は『孝経』にも義疏を書いていたことが分かる。 ②内容を…

『公羊傳疏』引『孝経疏』について(2)

前回の続きです。『公羊傳疏』に『孝経疏』という言葉が引かれる例は、三ケ所あるようです。前回紹介したものも含めて、下に掲げておきます。 ・『公羊傳』襄公二十九年疏 云「孔子曰,三皇設言,民不違,五帝畫象,世順機,三王肉刑揆漸加,應世黠巧姦偽多…

『公羊傳疏』引『孝経疏』について(1)

何気なく『公羊傳疏』を読んでいたところ、不思議な記述に出くわしました。 『公羊傳』襄公二十九年 〔傳〕閽弒吳子餘祭。閽者何。門入也。刑人也①。刑人則曷為謂之閽。刑人,非其人也。君子不近刑人。近刑人,則輕死之道也。 〔注①〕以刑為閽。古者肉刑墨、…