達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

目録学

「時勢」という考え方(2)

前回、汪暉著・石井剛訳『近代中国思想の生成』(岩波書店、2011)に導かれて、「時勢」という考え方を紹介しました。今回は、渡邉大「章学誠の著述観(上)」(『文学部紀要』30(2)、2017、文教大学)を用いて、この「時勢」観念をよく用いていた章学誠の議…

『論衡』の篇数

以前、本ブログで余嘉錫の『四庫提要弁証』を取り上げ、『後漢書』についての『弁証』の内容を確認しました。 余嘉錫『四庫提要辨證』について - 達而録 『後漢書』の来歴(1) - 達而録 『後漢書』の来歴(2) - 達而録 今回は、後漢の王充の『論衡』につ…

劉咸炘の目録学講義(5)

前回に引き続き、劉咸炘『続校讐通義』の「通古今」篇を読みます。今日読むのは、この篇のまとめの部分です。 まとめると、昔は四部を並列で見ていたが、今は史部・子部を主とし、經部が上にあり、集部が下にある。天下の文は、内容で分けると三種にほかなら…

劉咸炘の目録学講義(4)

前回、劉咸炘「目録学」の部目篇を読んでいる途中でした。そして、前回扱った部分の後ろで、章学誠『校讐通義』宗劉篇、劉咸炘『続校讐通義』通古今、治四部などが引かれると書きました。 というわけで、今回はまず劉咸炘『続校讐通義』の「通古今」篇を見て…

劉咸炘の目録学講義(3)

引き続き、劉咸炘「目録学」上編から、今回は「部類」篇を読んでみます。 部類は、目録学のなかで最も重要なことで、いわゆる「辨章学術、考鏡源流」のことでさまざまな学問に関わり、最も大きなものである。この中には原理があって、それぞれの議論が集まる…

劉咸炘の目録学講義(2)

前回の続きです。今さらですが、劉咸炘の「目録学」は、以下の章立てからなっています。 弁言(前回紹介した文章) 上編 著録第一 存佚第二 真偽第三 名目第四 篇巻第五 部類第六 互著別裁第七 次第第八 題解第九 下編 版本第十 校勘第十一 格式第十二 一題…

劉咸炘の目録学講義(1)

このブログでは、たびたび劉咸炘という学者の文章を取り上げてきました。 劉咸炘『中書』三術篇(上) - 達而録 劉咸炘『中書』三術篇(下) - 達而録 劉咸炘『中書』認経論 - 達而録 今日は、劉咸炘『推十書』に収録されている「目録学」という文章の冒頭を…

劉咸炘『中書』三術篇(下)

前回の続きです。省略を加えながら、最後の二段を読むことにしましょう。このあたりから、「ああ、劉咸炘は確かに章学誠の読者だったのだな」と思わされる内容が出てきます。 章先生之書,至精者一言,曰:「為學莫大乎知類」。劉咸炘進以一言曰:「為學莫大…

古勝隆一『中国中古の学術と社会』

最近、法蔵館より、古勝隆一先生の『中国中古の学術と社会』が上梓されました。 pub.hozokan.co.jp 3~8世紀、中国中古時期は治乱興亡の時代環境を背景に学術が展開した時代であった。儒仏道・目録学・注釈学・国家権力・地域性に着目して、中古時期の思想…

Wikipedia執筆で使った本の紹介

たびたび本ブログで紹介してきたように、筆者はWikipediaの執筆に力を入れています。(ここ最近は忙しく、あまり執筆できていませんが…) chutetsu.hateblo.jp Wikipediaの記事を執筆する上では、逐一信頼できる書籍の出典を附し、情報源を明示することが求…

余嘉錫『四庫提要辨證』について

前回まで、余嘉錫(1884-1956)の『四庫提要辨證』という本を読んできました。概説の記事を書いていなかったので、簡単に紹介しておきます。 余嘉錫に関する基本的な情報(年表、目録、交友録、逸話など)は、ウェブサイト「中国近代文献学―余嘉錫の総合的研…

2019年中国学の新著紹介!

年の瀬も近くなってまいりましたが、今年も中国学界隈から、多数の良著が出版されました。そのうち、高い質を備えながらも、初学者でも気軽に読めるような本をピックアップしてご紹介いたします。 私自身が入手して読んだ本に限定して紹介していますので、他…