達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

2023-01-01から1年間の記事一覧

Wikipedia執筆録(4)

ものすごく久々にWikipediaを色々更新しました。知り合いのWikipedianたちにマレーシア関連の記事の執筆をする交流会に誘ってもらったのがきっかけです。 セクシュアリティ・ムルデカ英語版を翻訳して、日本語文献から色々補強しました。これが再開のきっか…

国立大学法人法改正案について

先週、参院本会議にて、国立大学法人法の改正案が可決されました。大雑把な経緯や改正案の内容については、この改正案に対する反対署名を集めているサイトに詳しいです。→オンライン署名 · 大学の自治に死刑を宣告する国立大学法人法「改正」案の廃案を求め…

文フリで買った本④―『夕炎の人』

文フリで買った本を紹介するシリーズの続きです。今回は、星槎渡河さんの『夕炎の人』という小説を取り上げます。Twitter経由で昔から知り合いだった方の本ということで、とても楽しみにしていました。 領主の屋敷の庭師であるセッケムは、最近あることに悩…

文フリで買った本③―『MagazineF』と『From the Hell Magazine』

文フリで買った本の感想を書く記事の続きです。今回は、「四面楚歌系クィアメディア」を名乗る『MagazineF』vol.1, 2(竹輪書房)と、文乃(Ayano)さんの『From the Hell Magazine』vol.1, 2から。 なお、二つの文章は、全く同じ話をしているというわけでは…

文フリで買った本②―『砂時計』第五号

前回、文フリで買った文芸同人 北十さんの『砂時計』第四号の感想を書きました。今回は第五号の感想です。 まず取り上げたいのは、桐崎鶉さんの短歌集『感性の問題』です。桐崎さんの短歌には、自分も身につまされる作品がいくつもありました。千葉優作さん…

文フリで買った本①―『砂時計』第四号

文フリで買ってきた『砂時計』第四号を読んだので、感想を書いていきます。発行者は「北十 | 文芸同人 北十 | Hokkaido」さんです。 冒頭にあるのが『片袖の魚』の監督の東海林毅さんと、「北十」の音無早矢さんの対談記事です。『片袖の魚』は、以前関西ク…

文学フリマ@東京に行ってきました

文学フリマ@東京に行ってきました。 bunfree.net 下が獲得したものです。 FromTheHellMagazine 文芸同人「北十」 果ての向こう側通信 星槎渡河 TT (press) 無知 本の感想は、またのちのち書いていこうと思います。 来年にでも自分でも何かZINEでも書けたら…

読書の秋に読んだ本

秋と言いながら、急に暑くなる日があって困りますね。とはいえ大分涼しくなってきたので、たまに散歩に出かけて講演で本を読んだりしています。最近読んだ本の一部を簡単にご紹介。 中村一成『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』戦前から朝鮮人が多く在住して…

「漫长的季节」(漫長的季節)に出てくる中国語

最近、「漫长的季节」という中国ドラマを観ています。 www.youtube.com 回想シーンと現在の時間軸を行き来しながら、サスペンスっぽい仕立ての群像劇という内容です。スリリングな展開と伏線の散りばめ方が面白く、いま5話あたりまで見ました。 4~5話あ…

2023年9~10月に観た映画

すっかり映画鑑賞の記録ブログみたいになってきましたが、まあこういう時期があってもいいでしょう。 ①「福田村事件」 まずマイナスの評価から書いていくと、前半、このシーンいるか?というところが多いのが気になってしまいますね。村人たちの日常があって…

第16回関西クィア映画祭(4)

関西クィア映画祭の感想の続きです。最終日に観た映画を抜き出して書いていきます。まずは海外短編集から。 kansai-qff.org ハテナだらけの食卓ゲイをカミングアウトする食卓の会話劇。ゲイという存在を全く知らない両親。息子に寄り添うでもなく、かといっ…

第16回関西クィア映画祭(3)

関西クィア映画祭の感想の続きです。国内コンペ部門の続きを書きます。今回はさらっと。 kansai-qff.org 「駆け抜けたら、海」全体的に絵がとても綺麗で、アフタートークで監督がフォトデザイナー(?、すいません、ちょっと記憶が怪しいです)と知って納得…

第16回関西クィア映画祭(2)

前回の続きです。 kansai-qff.org 今回は、国内コンペ作品の一つの「私の愛を疑うな」について、感想を書いていこうと思います。 国内作品コンペティション:第16回 関西クィア映画祭 2023 [KQFF2023] 私もこの作品に投票しました。個人的には、昨年のクィア…

第16回関西クィア映画祭(1)

今年も関西クィア映画祭に参加してきましたので、しばらくその感想を書いていこうと思います。 kansai-qff.org ちなみに、去年参加したときの記事が以下です。 関西クィア映画祭に行ってきました - 達而録 映画「ノー・オーディナリー・マン」(No Ordinary …

「時勢」という考え方(2)

前回、汪暉著・石井剛訳『近代中国思想の生成』(岩波書店、2011)に導かれて、「時勢」という考え方を紹介しました。今回は、渡邉大「章学誠の著述観(上)」(『文学部紀要』30(2)、2017、文教大学)を用いて、この「時勢」観念をよく用いていた章学誠の議…

「時勢」という考え方(1)

汪暉著・石井剛訳『近代中国思想の生成』(岩波書店、2011)の序論・第三節「天理/公理と歴史」に、「時勢」概念について要領よくまとまっており、分かりやすかったのでご紹介します。以下、p.119~125の内容を整理したものです。一部、私の言葉を加えて説…

ブログ開設五周年

ブログ開設五周年を迎えました。次から六年目に突入します。一応、ほぼ毎週更新ということで頑張っております。 最近は漢文を読んだ記事が少ないですが、これは漢文を読んでいないというわけではなく、博論が佳境に入ってきた結果、読む漢文はすべて研究に直…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(3)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)の読書メモの続きです。今回は、第三章・第四節「身体への書き込み、パフォーマティヴな攪乱」から抜き出します。以下、引用部はp…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(2)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)の読書メモの続きです。 今回は、政治行動のための連帯についてバトラーが論じているところを見ていきます。以下、p.42~44を引用…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(1)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)を改めて読みました。数回に亘って、メモ書きを残しておこうと思います。 今回は、議論の入り口ということで、本書で特に主眼に置…

京都大学吉田寮現棟・食堂写真展を開催します

宣伝です。 東京・新宿にて、京都大学吉田寮の写真展を開催します。 一週間ほど開催し、私はだいたいお店にいるつもりです。もし確実に会いたいという方がおられましたら、コメント欄などで連絡ください。 場所:IRREGULAR RHYTHM ASYLUM(新宿駅徒歩10分) …

『クィア・スタディーズをひらく』第五章「教育実践学としてのクィア・ペダゴジーの意義」

先週は少々体調を崩しており、ブログ更新をお休みしました。 今回は、菊地夏野・堀江有里・飯野由里子編著『クィア・スタディーズをひらく』(晃洋書房、2019)、第五章「教育実践学としてのクィア・ペダゴジーの意義」(渡辺大輔)の第二節(p.142-147)の…

2023年4~6月に観た映画

最近見た映画と簡単な感想を並べておきます。東京は映画館が充実していていいですね(下二つ以外は全国でやっている映画ですが…)。一応、ネタバレがあるので注意してください。 ダンジョン&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り 予告編を見て、あるあるアメリ…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(5)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(4)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(3)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(2)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、前回の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。(「劉炫の学問とその書物環境」の公刊 - 達而録) 〔記事一覧〕 梅賾本『尚…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1)

※今回から数回に亘って更新する記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、前回の記事でお知らせした論文の下敷きになりました(「劉炫の学問とその書物環境」の公刊 - 達而録)。 論文と重なる所もなくは…

「劉炫の学問とその書物環境」の公刊

2023年3月発行の『六朝学術学会報』24号に、拙著「劉炫の学問とその書物環境」が掲載されております。 劉炫については、このブログでもたびたび取り上げてきました。 『孝經述義』廣至德章について(1) - 達而録 『孝經述義』廣至德章について(2) - 達…

神塚淑子『『老子』―“道”への回帰』

岩波書店の「書物誕生―あたらしい古典入門」シリーズより、神塚淑子『『老子』―“道”への回帰』(岩波書店、2009)を読んでいます。今日は、第一部・第二章の「老子と仏教」より、『老子変化経』という本についての一段を読んでみます。 『老子変化経』は、敦…