達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

第16回関西クィア映画祭(1)

今年も関西クィア映画祭に参加してきましたので、しばらくその感想を書いていこうと思います。 kansai-qff.org ちなみに、去年参加したときの記事が以下です。 関西クィア映画祭に行ってきました - 達而録 映画「ノー・オーディナリー・マン」(No Ordinary …

「時勢」という考え方(2)

前回、汪暉著・石井剛訳『近代中国思想の生成』(岩波書店、2011)に導かれて、「時勢」という考え方を紹介しました。今回は、渡邉大「章学誠の著述観(上)」(『文学部紀要』30(2)、2017、文教大学)を用いて、この「時勢」観念をよく用いていた章学誠の議…

「時勢」という考え方(1)

汪暉著・石井剛訳『近代中国思想の生成』(岩波書店、2011)の序論・第三節「天理/公理と歴史」に、「時勢」概念について要領よくまとまっており、分かりやすかったのでご紹介します。以下、p.119~125の内容を整理したものです。一部、私の言葉を加えて説…

ブログ開設五周年

ブログ開設五周年を迎えました。次から六年目に突入します。一応、ほぼ毎週更新ということで頑張っております。 最近は漢文を読んだ記事が少ないですが、これは漢文を読んでいないというわけではなく、博論が佳境に入ってきた結果、読む漢文はすべて研究に直…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(3)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)の読書メモの続きです。今回は、第三章・第四節「身体への書き込み、パフォーマティヴな攪乱」から抜き出します。以下、引用部はp…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(2)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)の読書メモの続きです。 今回は、政治行動のための連帯についてバトラーが論じているところを見ていきます。以下、p.42~44を引用…

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(1)

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、2018、新装版)を改めて読みました。数回に亘って、メモ書きを残しておこうと思います。 今回は、議論の入り口ということで、本書で特に主眼に置…

京都大学吉田寮現棟・食堂写真展を開催します

宣伝です。 東京・新宿にて、京都大学吉田寮の写真展を開催します。 一週間ほど開催し、私はだいたいお店にいるつもりです。もし確実に会いたいという方がおられましたら、コメント欄などで連絡ください。 場所:IRREGULAR RHYTHM ASYLUM(新宿駅徒歩10分) …

『クィア・スタディーズをひらく』第五章「教育実践学としてのクィア・ペダゴジーの意義」

先週は少々体調を崩しており、ブログ更新をお休みしました。 今回は、菊地夏野・堀江有里・飯野由里子編著『クィア・スタディーズをひらく』(晃洋書房、2019)、第五章「教育実践学としてのクィア・ペダゴジーの意義」(渡辺大輔)の第二節(p.142-147)の…

2023年4~6月に観た映画

最近見た映画と簡単な感想を並べておきます。東京は映画館が充実していていいですね(下二つ以外は全国でやっている映画ですが…)。一応、ネタバレがあるので注意してください。 ダンジョン&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り 予告編を見て、あるあるアメリ…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(5)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(4)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(3)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、以前の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。 〔記事一覧〕 梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1) - 達而録 梅賾本『尚書』…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(2)

※前回の続きです。この一連の記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、前回の記事でお知らせした論文の下敷きになりました。(「劉炫の学問とその書物環境」の公刊 - 達而録) 〔記事一覧〕 梅賾本『尚…

梅賾本『尚書』と『経典釈文』(1)

※今回から数回に亘って更新する記事は、二年ほど前に執筆して、そのままブログの下書きとして眠り続けていたものです。一部が、前回の記事でお知らせした論文の下敷きになりました(「劉炫の学問とその書物環境」の公刊 - 達而録)。 論文と重なる所もなくは…

「劉炫の学問とその書物環境」の公刊

2023年3月発行の『六朝学術学会報』24号に、拙著「劉炫の学問とその書物環境」が掲載されております。 劉炫については、このブログでもたびたび取り上げてきました。 『孝經述義』廣至德章について(1) - 達而録 『孝經述義』廣至德章について(2) - 達…

神塚淑子『『老子』―“道”への回帰』

岩波書店の「書物誕生―あたらしい古典入門」シリーズより、神塚淑子『『老子』―“道”への回帰』(岩波書店、2009)を読んでいます。今日は、第一部・第二章の「老子と仏教」より、『老子変化経』という本についての一段を読んでみます。 『老子変化経』は、敦…

京大吉田寮の存続のための署名へのご協力のお願い

本ブログでは、たびたび京都大学吉田寮の存続に関する話題を取り上げてきました。 京大吉田寮について - 達而録 明日、吉田寮の集会があります - 達而録 近況 - 達而録 先日、吉田寮の存続を訴えるための署名サイトが立ち上がったとのことですので、この場を…

林平和『禮記鄭注音讀與釋義之商榷』を読む

昔、古本市で入手した林平和『禮記鄭注音讀與釋義之商榷』(文史哲出版社, 1981)という本をつらつらと眺めていました。この本は、『礼記』の鄭玄注のなかから、鄭玄の「音読」と「釈義」に疑問がある例を取り上げて、札記形式で一つ一つ議論するものです。 …

佐々木愛「儒教の「普及」と近世中国社会―家族倫理と家礼の変容」

最近出版された、『東アジアは「儒教社会」か? アジア家族の変容』(京都大学学術出版会、2022)という本を入手して少しずつ読んでいます。 今回は、第一部・第二章に収録されている、佐々木愛氏の「儒教の「普及」と近世中国社会―家族倫理と家礼の変容」の…

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー 』

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』(早川書房、2018)を読みました。SF作家であり、翻訳家として中国SF作品の英語圏への普及に力を尽くしてきたケン・リュウによって集められたアンソロジーの日本語版です。 どれもSFの魅力がこれでもかというほど…

「『達而録』記事ガイド」を作りました

「Dynalist」というサービスを使って、本ブログの記事ガイドを作成しました。 ➡「『達而録』記事ガイド」 見ていただくと分かるように、ジャンルごとに分かれています。各項目の左側の◎をクリックすると、そこに分類されている記事が展開されます。 記事が増…

奨学金・研究助成あれこれ

一般に、研究を続けていくにあたっては、奨学金や研究費を確保するのはとても大切なことです(もともとお金に困っていない人はその限りではありませんが)。最近は雇用が不安定になる中で、物価上昇に比して最低時給はさほど上がらないという状況も相まって…

小尾郊一「古典注釈の態度」

今日は、小尾郊一氏の「古典注釈の態度」を紹介します。以下のまっつんさんのツイートに教えていただきました。 国会図書館デジタルコレクションの恩恵にあずかり「古典注釈の態度」(小尾郊一 著 中国中世文学研究22)読了。「義疏」や「正義」を中心に、中国…

「崔靈恩の『三禮義宗』―鄭玄注から南北朝經學へ」の公刊

2023年3月発行の『中国思想史研究』44号に、拙著「崔靈恩の『三禮義宗』―鄭玄注から南北朝經學へ」が掲載されております。 崔靈恩の『三禮義宗』という書物について、つらつらと書き連ねたものです。当該号には、中村慎之介氏・工藤卓司氏の論文も載せられて…

おしらせ

書類準備と引越作業で忙殺されていて、今週・来週の更新はお休みします。 四月から東京に引っ越しますので、関東圏にお住まいの方と色々な縁が繋がればと思っております。ぜひ連絡ください! (棋客)

高橋均 『六朝論語注釈史の研究』(1)

最近、高橋均 『六朝論語注釈史の研究』(知泉書館、2022)を入手しました。 『論語』の研究、すなわち注釈は漢代から始まり、その成果は魏の何晏(190-249)『論語集解』にまとめられ、また300年後にはそれらも含め新たな研究を集約した梁の皇侃(488-545)『論…

近況

今日は、最近のできごとやニュースを書いてみます。漢文とはあまり関係がないですが、どれも私と個人的に関わりのあるものです。 ①田中圭太郎『ルポ 大学崩壊』 (ちくま新書) の出版 いま、全国各地の大学で起こっているさまざまな問題について、綿密な取材…

『論衡』の篇数

以前、本ブログで余嘉錫の『四庫提要弁証』を取り上げ、『後漢書』についての『弁証』の内容を確認しました。 余嘉錫『四庫提要辨證』について - 達而録 『後漢書』の来歴(1) - 達而録 『後漢書』の来歴(2) - 達而録 今回は、後漢の王充の『論衡』につ…

【中国哲学史】無料で使える便利なサービスのリスト-オンライン篇(続)

以前、こんな記事を書きました。 chutetsu.hateblo.jp この記事は書き殴りでしたので、少し備忘のために追加しておきます。 13階の17号室(東洋学関係の物置部屋)とてつもなく有用。さまざまなデータベースが分類されてまとめてあります。「やたがらすナビ…