達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

2023-01-01から1年間の記事一覧

京大吉田寮の存続のための署名へのご協力のお願い

本ブログでは、たびたび京都大学吉田寮の存続に関する話題を取り上げてきました。 京大吉田寮について - 達而録 明日、吉田寮の集会があります - 達而録 近況 - 達而録 先日、吉田寮の存続を訴えるための署名サイトが立ち上がったとのことですので、この場を…

林平和『禮記鄭注音讀與釋義之商榷』を読む

昔、古本市で入手した林平和『禮記鄭注音讀與釋義之商榷』(文史哲出版社, 1981)という本をつらつらと眺めていました。この本は、『礼記』の鄭玄注のなかから、鄭玄の「音読」と「釈義」に疑問がある例を取り上げて、札記形式で一つ一つ議論するものです。 …

佐々木愛「儒教の「普及」と近世中国社会―家族倫理と家礼の変容」

最近出版された、『東アジアは「儒教社会」か? アジア家族の変容』(京都大学学術出版会、2022)という本を入手して少しずつ読んでいます。 今回は、第一部・第二章に収録されている、佐々木愛氏の「儒教の「普及」と近世中国社会―家族倫理と家礼の変容」の…

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー 』

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』(早川書房、2018)を読みました。SF作家であり、翻訳家として中国SF作品の英語圏への普及に力を尽くしてきたケン・リュウによって集められたアンソロジーの日本語版です。 どれもSFの魅力がこれでもかというほど…

「『達而録』記事ガイド」を作りました

「Dynalist」というサービスを使って、本ブログの記事ガイドを作成しました。 ➡「『達而録』記事ガイド」 見ていただくと分かるように、ジャンルごとに分かれています。各項目の左側の◎をクリックすると、そこに分類されている記事が展開されます。 記事が増…

奨学金・研究助成あれこれ

一般に、研究を続けていくにあたっては、奨学金や研究費を確保するのはとても大切なことです(もともとお金に困っていない人はその限りではありませんが)。最近は雇用が不安定になる中で、物価上昇に比して最低時給はさほど上がらないという状況も相まって…

小尾郊一「古典注釈の態度」

今日は、小尾郊一氏の「古典注釈の態度」を紹介します。以下のまっつんさんのツイートに教えていただきました。 国会図書館デジタルコレクションの恩恵にあずかり「古典注釈の態度」(小尾郊一 著 中国中世文学研究22)読了。「義疏」や「正義」を中心に、中国…

「崔靈恩の『三禮義宗』―鄭玄注から南北朝經學へ」の公刊

2023年3月発行の『中国思想史研究』44号に、拙著「崔靈恩の『三禮義宗』―鄭玄注から南北朝經學へ」が掲載されております。 崔靈恩の『三禮義宗』という書物について、つらつらと書き連ねたものです。当該号には、中村慎之介氏・工藤卓司氏の論文も載せられて…

おしらせ

書類準備と引越作業で忙殺されていて、今週・来週の更新はお休みします。 四月から東京に引っ越しますので、関東圏にお住まいの方と色々な縁が繋がればと思っております。ぜひ連絡ください! (棋客)

高橋均 『六朝論語注釈史の研究』(1)

最近、高橋均 『六朝論語注釈史の研究』(知泉書館、2022)を入手しました。 『論語』の研究、すなわち注釈は漢代から始まり、その成果は魏の何晏(190-249)『論語集解』にまとめられ、また300年後にはそれらも含め新たな研究を集約した梁の皇侃(488-545)『論…

近況

今日は、最近のできごとやニュースを書いてみます。漢文とはあまり関係がないですが、どれも私と個人的に関わりのあるものです。 ①田中圭太郎『ルポ 大学崩壊』 (ちくま新書) の出版 いま、全国各地の大学で起こっているさまざまな問題について、綿密な取材…

『論衡』の篇数

以前、本ブログで余嘉錫の『四庫提要弁証』を取り上げ、『後漢書』についての『弁証』の内容を確認しました。 余嘉錫『四庫提要辨證』について - 達而録 『後漢書』の来歴(1) - 達而録 『後漢書』の来歴(2) - 達而録 今回は、後漢の王充の『論衡』につ…

【中国哲学史】無料で使える便利なサービスのリスト-オンライン篇(続)

以前、こんな記事を書きました。 chutetsu.hateblo.jp この記事は書き殴りでしたので、少し備忘のために追加しておきます。 13階の17号室(東洋学関係の物置部屋)とてつもなく有用。さまざまなデータベースが分類されてまとめてあります。「やたがらすナビ…

梁鴻『中国はここにある』

梁鴻『中国はここにある』(鈴木将久・河村昌子・杉村安幾子訳、みすず書房、2018)という本を読みました。先日、たまたま著者の方とお会いする機会があり、この本を紹介していただきました。 近代化の矛盾に苦しむ農村に、現代中国の姿を浮かび上がらせ、大…

ベンヤミン著・鹿島徹訳『[新訳・評注]歴史の概念について』(2)

予告していた通り、ベンヤミン著・鹿島徹訳『[新訳・評注]歴史の概念について』(未来社、2015)の内容を少しだけ紹介します。 まず、ベンヤミン『歴史の概念について』のテーゼⅥ(p.49-50)を一部引用します。 過ぎ去ったものを史的探究によってこれとは…

ベンヤミン著・鹿島徹訳『[新訳・評注]歴史の概念について』(1)

知人から推薦されて、ベンヤミン著・鹿島徹訳『[新訳・評注]歴史の概念について』(未来社、2015)を読んでいます。まだ途中ですが、深い感銘を受けております。折角なので、このブログでも簡単に紹介していきます。 この本は、ベンヤミンに初めて触れる私…

劉咸炘の史学講義(3)

前回の記事、劉咸炘『治史緒論』中篇の四「史旨」の続きです。 まとめると、史に載せられたことは人事である。どうして人事の律を究めつくすことができようか。これを究めたいのなら、『易』こそ重要だ。道家は史に詳しく、道家の持論である循環の律は、本当…

劉咸炘の史学講義(2)

前回に引き続き、『治史緒論』を読んでいきます。中篇の四「史旨」を見ていきましょう。 「旨」とは、章先生がいうところの「史でありながら子の意があるもの」である。史は客観に基づくが、旨を言う時に主観が入ってきてしまうのは、史としての職分を失うも…

劉咸炘の史学講義(1)

年が明けましたが、相変わらず劉咸炘を読んでいきます。今回からは、劉咸炘が史学について概論を述べている『治史緒論』を見ていくことにします。 『治史緒論』のうち、中篇「史旨」というところを読んでみたいのですが、今回はその前提として、本書の序文を…

新しい一年を迎えました

2023年になりました。中の人のうちの一人は、まだ博士課程で研究を続けています。今年は論文を数本形にできたら、と考えているところです。 昨年の記事を眺めていましたが、章学誠・劉咸炘関係の記事がやたら多いですね。そのわりに、どれも内容が薄いのが残…