達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

最近読んだ本

 新年度がまもなく始まるということで、目まぐるしく忙しい日々を送っています。もともと論文の執筆、前回紹介した吉田寮関係の活動で時間が埋まっていたところに、もうすぐ授業や研究室業務も始まりますから、ブログを書く時間がなかなか取れません。

 今回は手抜き更新ということで、最近読んだ本をざっと並べてみました。画像のリンクはアマゾンアフィリエイトを利用していますので、みなさまぜひクリックしてご購入ください。

『全訳 六度集経―仏の前世物語六度集経研究会』法蔵館、2021

 菩薩のさまざまな物語が種類別にまとめられた本。それぞれの話がよくできていて、大乗仏教とは何たるかを直感的に掴むことができるように思います。(というか、それこそがこのお経の意義なのでしょうが。)

 「仏教には○○を重視する」「仏教には○○の思想がある」などと概説書や専門書を読むだけでは、なかなか頭に入らないものです。過去お経を読んだ人々と同じように、自分も実際に読んでみて、仏教の考え方を知ることはとても大切です。

矢木毅『韓国の世界遺産 宗廟―王位の正統性をめぐる歴史』臨川書店、2016

 宗廟についての制度―現実を理念に当てはめる、空虚な議論が渦巻く世界―という、複雑で分かりにくくて面白くない事柄をどう分かりやすく説明するか、ということにチャレンジした本ではないかと思います。

 特に、「形骸化した理念や既成事実の無原則の積み重ねなど、現代社会に生きる我々にも無縁ではないある種の病理現象に対する一服の解毒剤」(p.203)として本書を読んでほしいという言葉に、近い分野を研究する者として共感を覚えました。

『赤い星は如何にして昇ったか―知られざる毛沢東の初期イメージ』臨川書店、2016

 周辺知識から丁寧に書かれていて、楽しみながら読むことができました。どのようにイメージが形作られていったか、という点に着目する研究は、文献解釈学とも一脈通じる面がありますね。

吉川忠夫『三余続録』法蔵館、2021

 新聞に載せられていたコラムを集めたもの。短文でこれだけ味の出る文章を書けるものなのか、と感服させられます。ブログで取り上げたい文章がいくつかあったので、またいつか紹介すると思います。

(棋客)