達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

授業

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「無」と「勿」のちがい――『論語集注』公冶長篇より

「山の学校」での『論語集注』の講読クラスで読んだ、印象に残る部分をメモしておきます。『論語』公冶長の一節より。 子貢曰:「我不欲人之加諸我也,吾亦欲無加諸人。」子曰:「賜也,非爾所及也。」 子貢が言った。「私は、他人が私にしてほしくないこと…

「宰予昼寝」章の胡寅の解釈

「山の学校」での『論語集注』の講読クラスで読んだ、印象に残る部分を書いていきます。『論語』公冶長の一節より。 宰予晝寢。子曰:「朽木不可雕也,糞土之牆不可杇也,於予與何誅。」子曰:「始吾於人也,聽其言而信其行;今吾於人也,聽其言而觀其行。於…

『世説箋本』について(9):王夷甫の夫婦

いつも通り、「山の学校」での授業から。魏晋時代の夫婦の関係性の一つが分かる面白いエピソード。 『世説新語』規箴篇 王夷甫婦郭泰寧女,才拙而性剛,聚斂無厭,干豫人事。夷甫患之而不能禁。時其鄉人幽州刺史李陽,京都大俠,猶漢之樓護,郭氏憚之。夷甫…

秦鼎『世説箋本』について(8):向雄と劉淮

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。今回は、『世説新語』方正篇より、向雄(臣下)と劉淮(上司)の間に確執があり、武帝(皇帝)が仲直りを命じたものの、向雄が断固拒否した、というなかな…

大学の講義をやってみて思うこと

ここ数年、私は、博士課程を終えて、大学での非常勤講師や、カルチャースクール的な場所での講師として働いています。 私の通っていた大学では、自分の専門分野の知識や研究法について研鑽を積むことが主で、講義や授業のやり方を教わることはありませんでし…

朱子と『論語義疏』

「山の学校」の漢文講読クラスで読んだ、印象に残る部分を書いていきます。引き続き、朱熹『大学或問』の一節から、二つの話題を取り上げます。なお、『大学或問』についての説明も、前の記事に書いているのでそちらをご参照ください。 天下のことは「士」に…

幻の講義資料の供養

今年の初め、とある大学の「東洋史」の講義の非常勤講師の公募に出していたのですが、面接で落ちてしまいました。そのこと自体は私の力不足でしかなく、ただただ仕方のないことなのですが、準備したシラバスと初回の授業レジュメの出しどころがなくなってし…

虚詞辞典のススメ

「山の学校」の『論語集注』を読むクラスの授業内容から。先週に続いて、辞書の話題です。 『論語』里仁 子曰:「我未見好仁者,惡不仁者。好仁者,無以尚之;惡不仁者,其為仁矣,不使不仁者加乎其身。有能一日用其力於仁矣乎?我未見力不足者。蓋有之矣,…

朱子の孔子像

「山の学校」での授業の内容から、朱子の『論語集注』の一節を読んでみます。今回取り上げるのは『論語』里仁篇の以下の箇所です。 子曰:「參乎!吾道一以貫之。」曾子曰:「唯。」子出。門人問曰:「何謂也?」曾子曰:「夫子之道,忠恕而已矣。」 孔子が…

『世説箋本』について(7):劉慶孫と庾子嵩

「山の学校」の漢文を読む授業から、今回は『世説新語』雅量篇の逸話を取り上げます。 劉慶孫在太傅府,于時人士,多為所構。唯庾子嵩縱心事外,無跡可閒。後以其性儉家富,說太傅令換千萬,冀其有吝,於此可乘。太傅於眾坐中問庾,庾時頹然已醉,幘墜几上,…

天下のことは「士」には関係ないのか?

「山の学校」の漢文講読クラスで読んだ、印象に残る部分について書いていきます。今回は朱熹『大学或問』の一節を取り上げます。 『大学或問』とは、四書の一つである『大学』について、朱熹が仮想問答の形式を取って説明する本です。『大学』は朱子学のなか…

秦鼎『世説箋本』について(6):劉孝標と玄学・清談

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。今回は、具体的な問題点というより、なんとなく感じたことを書き残しておくだけです。 『世説新語』言語篇を読んでいるとき、以下の難解な劉孝標注に出会い…

秦鼎『世説箋本』について(5):王済と司馬炎

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。今回は、『世説新語』方正篇より、王済(王武子)が司馬炎(武帝)を鋭く諫めた話。 『世説新語』方正篇 武帝語和嶠曰:「我欲先痛罵王武子,然後爵之。」…

秦鼎『世説箋本』について(4):馬融と鄭玄(続)

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。前回の『世説新語』文学篇の鄭玄が師匠の馬融に追われた話の続きです。 (1)鄭玄在馬融門下,三年不得相見,高足弟子傳授而已。嘗算渾天不合,諸弟子莫能…

『四書集注』の音注について

これまで、「山の学校」の『世説新語』を読むクラスで得た知見を共有してきました。私は他に『論語集注』を読む授業、『大学章句』と『大学或問』を読む授業もしておりまして、今回はそちらを題材に、多音字の読み分けについて整理しておきます。 ○「見、賢…

秦鼎『世説箋本』について(3):馬融と鄭玄

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。『世説新語』文学篇の冒頭、鄭玄が師匠の馬融の学塾を去る時に、嫉妬されて追われて殺されかけたという話です。 (1)鄭玄在馬融門下,三年不得相見,高足…

秦鼎『世説箋本』について(2):王導と周顗

前回に引き続き、秦鼎『世説箋本』を読んでいる「山の学校」の授業から、印象に残っている箇所を取り上げてみます。今回は、『世説新語』言語中の三十一章、王導の逸話から。 過江諸人,每至美日,輒相邀新亭,藉卉飲宴。周侯坐而歎曰:「風景不殊,正自有山…

秦鼎『世説箋本』について(1):版本の整理

2024年度から、学校法人北白川学園の「山の学校」にて、漢文の講座をいくつか担当しております。本来は私が漢文の読み方を一から教えていく講座なのですが、むしろ受講生の方から私が教わることも多く、私自身勉強させてもらいながら授業をしています。今日…