達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

朱子の孔子像

「山の学校」での授業の内容から、朱子の『論語集注』の一節を読んでみます。今回取り上げるのは『論語』里仁篇の以下の箇所です。 子曰:「參乎!吾道一以貫之。」曾子曰:「唯。」子出。門人問曰:「何謂也?」曾子曰:「夫子之道,忠恕而已矣。」 孔子が…

『世説箋本』について(7):劉慶孫と庾子嵩

「山の学校」の漢文を読む授業から、今回は『世説新語』雅量篇の逸話を取り上げます。 劉慶孫在太傅府,于時人士,多為所構。唯庾子嵩縱心事外,無跡可閒。後以其性儉家富,說太傅令換千萬,冀其有吝,於此可乘。太傅於眾坐中問庾,庾時頹然已醉,幘墜几上,…

学会発表の告知

来月の中頃、六朝学術学会の第48回例会にて、発表させていただきます。 liuchaogakkai.wixsite.com 名古屋大学での開催です。オンラインもあり、非会員でも無料で聴講可能です(要事前申し込み)。専門的な内容になりますが、近刊予定の拙著についてもお話さ…

さらば、将棋倶楽部24

◆将棋とわたし 私の将棋に対する感情はかなり複雑だ。 私が将棋を始めたのは小学校の頃。親から習い、小学校の将棋クラブでよく遊んでいた。中学校からは部活に所属し、高校の時には団体戦で全国大会に出たこともある。ただ、当時は将棋の団体戦を組める学校…

「憲法九条は日本を守っている」と言えるのはなぜか

この記事は、「憲法九条は日本を守っている」という理屈が綺麗事に聞こえるという人や、「国防のためには、戦争できると相手国を脅すことが必要」と考える人、また「そもそも憲法九条ってなんだっけ?」という人に向けて書いたものです。 または、そういう人…

天下のことは「士」には関係ないのか?

「山の学校」の漢文講読クラスで読んだ、印象に残る部分について書いていきます。今回は朱熹『大学或問』の一節を取り上げます。 『大学或問』とは、四書の一つである『大学』について、朱熹が仮想問答の形式を取って説明する本です。『大学』は朱子学のなか…

秦鼎『世説箋本』について(6):劉孝標と玄学・清談

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。今回は、具体的な問題点というより、なんとなく感じたことを書き残しておくだけです。 『世説新語』言語篇を読んでいるとき、以下の難解な劉孝標注に出会い…

日記(2026.1.23-2026.2.1)

最近の出来事。日記。トピック別。 ◆『いやはや熱海くん』 先日遊びに来た友達が、『いやはや熱海くん』という漫画が大好きで、貸してくれたので、あらためて読み直した。 熱海くんは学年イチの美形で、惚れっぽくて、男の人が好き。 「僕の顔が良いばっかり…

秦鼎『世説箋本』について(5):王済と司馬炎

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。今回は、『世説新語』方正篇より、王済(王武子)が司馬炎(武帝)を鋭く諫めた話。 『世説新語』方正篇 武帝語和嶠曰:「我欲先痛罵王武子,然後爵之。」…

秦鼎『世説箋本』について(4):馬融と鄭玄(続)

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。前回の『世説新語』文学篇の鄭玄が師匠の馬融に追われた話の続きです。 (1)鄭玄在馬融門下,三年不得相見,高足弟子傳授而已。嘗算渾天不合,諸弟子莫能…

素晴らしい場所、長崎人権平和資料館

先日、帰省のついでに寄り道して、長崎を訪れました。「長崎人権平和資料館」という場所に行くのが目的です。 www.nagasakijinkenheiwa.com 資料館は、長崎駅前から歩いて五分ほどです。二十六聖人殉教地(西坂公園)のある急坂を登っていくと、すぐに資料館…

ウィキペディアのエディタソンに参加してきました

もう一か月ほど前の話になりますが、2025年12月19日に東京外国語大学で開催されたウィキペディアのエディタソンに参加してきました。エディタソンとは、ウィキペディアの編集者が(対面またはオンラインで)一堂に会して、一緒にウィキペディアの編集を行っ…

学振DCの収入は、年金免除申請に通るぐらい低収入という話

博士課程の学生が公的な支援を受けることのできる数少ない制度として、通称「学振」と呼ばれるものがあります。「DC1」なら三年間、「DC2」なら二年間、学術振興会から給与を得られるという仕組みで、現状学振は「研究者養成の命綱の一つ」と言っても過言で…

2026年になりました

2026年になりました。新年になったからと言って何が変わるわけでもないのですが、一区切りということで更新しておきます。 去年は色々と環境が変わった年で、あちこちで授業をする機会が増えました。授業については、質はともかく、真面目に取り組めたので良…

「こころの時代〜宗教・人生〜 徹底討論vol.12 宗教は戦争にどう関わってきたのか(後編)」の感想

NHKの番組「こころの時代〜宗教・人生〜 徹底討論vol.12 宗教は戦争にどう関わってきたのか(後編)」を見ました。戦前~戦後にかけての、日本列島で活動していた宗教団体が、戦争とどのように向き合ってきたのかという点について、特に宗教団体の戦争協力に…

「はてなブログ 年間アワード2025」に選出されました

本ブログの記事が、「はてなブログ 年間アワード2025」の「ゲーム部門」に選出されていました! blog.hatenablog.com 選ばれたのは以下の記事です。 chutetsu.hateblo.jp 一年間に書かれるはてなブログの総記事数を考えると、ものすごい確率だと思うので、と…

『四書集注』の音注について

これまで、「山の学校」の『世説新語』を読むクラスで得た知見を共有してきました。私は他に『論語集注』を読む授業、『大学章句』と『大学或問』を読む授業もしておりまして、今回はそちらを題材に、多音字の読み分けについて整理しておきます。 ○「見、賢…

秦鼎『世説箋本』について(3):馬融と鄭玄

引き続き、秦鼎『世説箋本』を「山の学校」の授業で読んで印象に残っている箇所をメモしておきます。『世説新語』文学篇の冒頭、鄭玄が師匠の馬融の学塾を去る時に、嫉妬されて追われて殺されかけたという話です。 (1)鄭玄在馬融門下,三年不得相見,高足…

秦鼎『世説箋本』について(2):王導と周顗

前回に引き続き、秦鼎『世説箋本』を読んでいる「山の学校」の授業から、印象に残っている箇所を取り上げてみます。今回は、『世説新語』言語中の三十一章、王導の逸話から。 過江諸人,每至美日,輒相邀新亭,藉卉飲宴。周侯坐而歎曰:「風景不殊,正自有山…

秦鼎『世説箋本』について(1):版本の整理

2024年度から、学校法人北白川学園の「山の学校」にて、漢文の講座をいくつか担当しております。本来は私が漢文の読み方を一から教えていく講座なのですが、むしろ受講生の方から私が教わることも多く、私自身勉強させてもらいながら授業をしています。今日…

近刊のご案内

本ブログの筆者が一章分を担当した論集が出版されました。このブログでも一時期精力的に言及していた*1、「劉咸炘」という学者についての初歩的な整理をしています。比較的読みやすい本になっていると思いますので、ぜひお読みください。 ○古勝隆一・竹元規…

将棋連盟の「女流棋士のプロ編入制度」について思うこと

私は小学校の頃から将棋に親しんできて、中学から大学まで将棋部に在籍していました。ここ数年は思い出したように遊ぶぐらいであまり真面目にやっていませんが、ちゃんやっていた時期は、詰将棋と棋譜並べ、24にウォーズ、そして部員との対局と、一日中将棋…

アセクシュアル・アロマンティック入門、物語化批判の哲学など

「ちゃんと感想を書きたい」と思いながらも積み残している本がたくさんある。本当は丁寧に細かく感想を書きたいのだが、そこにこだわってなかなか書けないよりは、ひとまず雑でも何か書いた方がいいかということで、それほど読み返さず、ざっと感想を書いて…

the pillows「TRIP DANCER」の歌詞、良すぎないか

先々週、東京~京都を往復する間に、the pillowsのベスト盤「Fool on the planet」(2000年)を聴いていた。そこで友達とも意気投合したのだが、やっぱりこの頃のピロウズの歌詞って素晴らしい。たとえば「TRIP DANCER」の一節。 アラームが鳴ってても 目覚…

ウィキペディア・アジア月間の記事を執筆しました

日本語版ウィキペディアでは、アジア関連の記事を充実させる執筆イベントである「アジア月間」が毎年開催されています。 →Wikipedia:ウィキペディア・アジア月間 - Wikipedia 今年は「メトロ・マニラ・プライド」という、フィリピンのマニラ首都圏で開催され…

日記(2025.10.25-11.1)

■テント芝居 知り合いが出ている「マタヒバチ」という京都拠点の劇団によるテント芝居を観てきた。東京から京都まで、友達と一緒に車で行ってきた。車(自家用車)に乗るのはあまり好きではないのだが、今回はとんでもなく安上がりになるので経済状況的に乗…

時が経つのはあっという間?

■もう10月も終わる 2025年も終わりに近づいている。よく「時間が過ぎるのがあっという間」というが、これって「5年前の出来事が昨日のように感じる」ことを指すのか、それとも「先月の出来事が随分昔のことのように感じる」ことを指すのか、どっちなんだろう…

今後の計画メモ

前回の記事で、何か漢文の文献を読んでいきたいという話を書いた。整理してみると、なんだかんだ授業で読んでいるので思ったより漢文に触れているという気もして、少し安心した。 一応、今年の年末あたりまで、以下の予定を立ててみた。 劉沅『孝経直解』印…

漢文読まなきゃ……

このブログの昔の記事を眺めると分かる通り、私の専門は中国古典で、特に儒教経典(経書・四書五経)の解釈の歴史を辿ることを中心にやってきた。ただ、実はここ二年ほど、「新しく漢文の文献を読み始めた」という体験をあまりできていない。もちろん漢文に…

告知

六月、古勝先生にお誘いいただいて開催したトークイベントのレポートが、ぶんこものサイトで公開されています。 buncomo.jp だいぶ前の話になるのですが、すっかり宣伝を忘れていました。ぜひ読んでみてください。 (棋客)