達而録

ある中国古典研究者が忘れたくないことを書くブログ。毎週火曜日更新。

拙著『鄭玄から五経正義へ―中国古典解釈学への誘い』(法藏館、2026)が出版されます

 本ブログの筆者の初めての単著である、『鄭玄から五経正義へ―中国古典解釈学への誘い』(法藏館、2026)がまもなく出版されます。下記サイトから予約が可能です。

 

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拙著の書影

 経学の第一人者の鄭玄を中心に、中国古典の解釈の歴史を貫くロジックを探究し、文献を読み解く学者たちの鮮やかな工夫を描き出す。(鄭玄から五経正義へ - 法藏館 おすすめ仏教書専門出版と書店(東本願寺前)-仏教の風410年

 

 まずは、さまざまな面から私の研究活動を支えてくださったすべての方々に、あらためて感謝申し上げます。

 この本は、私が昨年3月に提出した博士論文を加筆修正したものです。このうち最後の章は、修士論文を修正したものになります。

 実は、このブログを書き始めたのは八年前、ちょうど修士課程一回生の時で、それから週一回更新をほぼ維持してきました。ということは、本書の研究を行っていた時期と、このブログの歩みは、ぴったり重なっているということになります。*1

 振り返ってみると、このブログの読者のみなさまに見守られながら、本書の完成までこぎ着いたようにも思えて、感慨深いものがあります。あらためて、本ブログの読者の皆様にも、深く感謝申し上げます。

 

 本書は、中国古典に触れたことがない方でも、本書の課題とその背景、また議論の内容が理解しやすいように、自分なりに工夫を凝らしました。「専門外の方でも、頭からゆっくり読めば全体を理解できる本」にすることを目標に、専門用語への説明や難しい漢字のふりがなを充実させています。

 博論を元にしている以上、どうしても「難しい本」という第一印象にはなるでしょうが、せめて「分からないけど、分からないなりに面白い」ぐらいの楽しみ方ができる本になっていればいいな、と思っています。

 筆者としては、一人でも多くの方に手に取っていただいて、新しい知の扉を開いていただければ、望外の喜びです。自分で買うのはちょっと……という方は、近所の図書館にリクエストしていただくという方法もあります。

 むろん、内容に多くの不備や誤りがあることも確実であり、それは今後の研究生活で誠実に引き受けていくしかありません。もし本書の内容についてご質問があれば、ぜひコメントください。喜んでお答えします。

 

 また、私が本書を執筆していた時の正直な気持ちを「あとがき」に書いています。とても大切なことを書いたので、少しだけ引用させてください(p.301~302)。

 この社会には深刻な差別と不公正があり、さまざまな人々が、さまざまな形で搾取され続けている。そしてそれは日々悪化の一途を辿っている。署名をし、寄付をし、情報発信をし、デモに行き、フリーパレスチナと叫んでも、何かがマシになったと思えることはほとんどない。目の前の過酷な状況を前にして、こんな「浮世離れ」した研究を編んでいていいものか、それは責任放棄ではないか、という問いかけは執筆中の自分に深く突き刺さった。

 本書で私は、誠実に文献に向き合い、古人との対話を試み、厳密な解釈を志向し、そこから出てきたものをどう政治的に位置付けるか、ということに取り組んできた。その意味で、私は迂遠ながらも自分に最も向いた方法で、解放に向けた道標を記したつもりである。しかしこれも、アカデミアでの「キャリア」を積み重ねる自分の罪悪感を軽くするための、言い訳に過ぎないのかもしれない。

 そんな中で、いま私ができる最低限のことは、こうした葛藤をありのままに開示し、本書を最後まで読んでいただいた方々に、何かの引っ掛かりを残すことにある。ここに、本書は多様な形での抵抗と革命の可能性を探る戦略の一つとして著されたものである、と明言しておきたい。そして、すべての人々、特に本書の読者の多数を占めると想像されるアカデミアの人々に向けて、ともに矛盾と向き合いながら行動を起こそうではないか、と呼びかけたい。

 

 最後に、あらためまして、出版をお引き受けいただいた法藏館さまに深く感謝いたします。こうした学術書の出版が難しくなりつつあるなかで、継続的に学術書を刊行されていることに敬意を表します。比較的手に取りやすい価格にしていただいたことも、ありがたい限りです。特に、緻密な編集をしていただいただけではなく、多岐にわたってアドバイスをしていただいた法藏館編集部の今西智久さまに、深く感謝いたします。*2

 そして、やわらかくカラフルで、とても印象的なブックデザインをしていただいた森華さまにも、深く感謝を申し上げます。「鄭玄や五経正義を題材に、親しみやすい手書きデザインを」という私の(無茶な)要望にお応え頂き、本当に嬉しい限りです。おかげさまで、自分で愛してあげたくなるような本になりました。もし本書を手に取っていただく方がいらっしゃいましたら、表紙や扉などのデザインにも注目していただけると嬉しいです。(もし内容が退屈でしたら、飾って部屋に彩りを加えることもできます。)

 

 さて、このブログでは、来週から、本書の章題・索引などを作る際に考えたことについて、連載形式で書いていく予定です。こちらも楽しみにお待ちください。

(棋客)

*1:修士~博士の期間の歩みについては、ブログにまとめたことがあります→文学部の修士課程~博士課程の7年間を振り返る(環境編) - 達而録文学部の修士課程~博士課程の7年間を振り返る(研究編) - 達而録

*2:最近、法藏館文庫さんのインタビュー記事が出ていました。とても面白かったです→400年の歴史の先にある、知のニューウェイヴ:法蔵館文庫の担当者たちに訊く|ヒルズライフ HILLS LIFE