達而録

中国学を志す学生達の備忘録。毎週火曜日更新。

中哲参考書目・「経書の訳本」篇

 概説書篇オンライン篇の続篇です。

 以前も書きましたが、訳を参照する際には、それがどのような方針で訳されているかということを頭に入れた上で利用する必要があります。例えば経書には、大きく古注(漢代~唐代)と新注(朱子学の解釈)の二種の注釈があり、現代の翻訳もどちらに依拠するかによって大きく変わってきます。また、過去の解釈に依拠せずに独自の訳を追求している場合は、「古典の読解の上では」少し役に立ちにくいということも往々にしてあります。(漢文の書き手は、概ね伝統的解釈を踏まえて文章を作っており、我々が彼らの文章を読む際には、その「伝統的解釈」を理解しておかねばならないため。)

  • 『儀禮』: 池田末利(東海大学出版会、1973)1 :図もあって使いやすい。他、士冠禮、士昏禮の部分しかないが、賈公彦疏を全訳した蜂屋邦夫編『儀禮士冠疏』『儀禮士昏疏』も質が高い。
  • 『春秋公羊伝』: 岩本憲司(汲古書院、1993) :何休注を含めた全訳。岩本憲司『春秋学用語集』シリーズに訂正が記されている場合があり、合わせて参考にするとよい。